A Magnificent Recording First - LOVE STORY ― 2009年08月09日 07時10分
米BMG Classics/RCA VICTOR 09026-60965-2(CD, (C)1992 )
A Magnificent Recording First - LOVE STORY
The World Greatest Orchestra Plays Great Love Themes of Today and Yesterday
Love Story, Andante from Concerto no.21(Mozart), Yesterday
The Windmills of Your Mind, Romeo & Juliet
The Heart is a Lonely Hunter ,West Side Story,
Tristan und Isolde ,Romeo & Juliet(Tchaikovsky)
Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
愛憎?がテーマのLPをもう一枚。
Maestro が見たら激怒しそうなジャケット(特に米盤のCDの方)であろう。オルガン交響曲のジャケットもそうだけど、アレは「クラシック音楽のレコード」からかけ離れたぶっ飛びデザインだ。
戦犯?は、恐らく、コロムビアから引き抜かれて、1970~1974年の間 RCA Records A&R 責任者(だと思うけど)であった ピーター=マンヴィス氏であろう。氏はコロムビア在籍時に、ワルター=カーロスのスイッチト・オン・バッハをプロデュースしたそうな。
Wendy Carlos(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Wendy_Carlos
※この人、アルバム作ってから女性に変身?してしまったのだ。
スイッチト・オン・バッハ(LPアルバム)
http://en.wikipedia.org/wiki/Switched-On_Bach
RCAは、1968年にオーマンディ/フィラデルフィアをコロムビアから引き抜くに当たり、5年間のロイヤリティーとして220万ドルを先払いし、さらに100万ドルをオーケストラの基金として寄付するなど莫大な負担をしているため、マンヴィス氏は、とにかく「元を取る」必要があったのではないかな。
ということで、セールスが期待出来ないシリアスなクラシックではなく、売り上げが期待できるポップスをとにかく録音させようとして、マエストロから「私はポップス指揮者じゃないぞ!」と激怒・反発されてしまったが・・・それでも依頼仕事はきっちりこなすのがマエストロ・ジーンではあるが
この 「ラヴ・ソングズ」や、「マーチ集」「ファンタスティック・フィラデルフィアンズ」、そして2枚の 「クリスマス・アルバム」は全てマンヴィス氏の企画だそうな。
ということで、オーマンディ・ファンからは目の敵?されている気の毒?なマンヴィス氏ではあるが、氏は冨田勲の "Snowflakes are Dancing" を大ヒットさせた立役者でもあるのだ。
冨田勲(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Isao_Tomita
Snowflakes are Dancing(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Snowflakes_are_Dancing
この辺りの事情は、冨田氏の著書「音の雲」(NHK出版)に詳しい。冨田ファン必見の書である。
これによると、日本のレコード会社には全く見向きもされなかったこの"Snowflakes are Dancing"のアルバムを聴いたマンヴィス氏、にっこりと笑って冨田氏に手を差し出し、「さあ、トミタ、ビールを飲みに行こう」と言ったそうな。
ビールを飲みながら「これは非常にセールスポイントの高いアルバムだ。『スイッチト・オン・バッハ』以上に世界で売ってみせる」と息まいたそうな。
日本のレコード会社に「置き場所がない」と言われたのに対してマンヴィス氏は
「『スイッチト・オン・バッハ』は、まずクラシックのソリストの棚、次にポピュラーの棚、電子音楽の棚、次に効果音の入った棚に置かれている。このアルバムもそのようにして置くつもりだ。置き場所が多ければそれだけ客の目に触れる」
・・・と、日本側のネガティヴ・シンキングとは正反対のポジティヴ・シンキングで売りまくる姿勢だったと・・・
ご存じの通り、アメリカで爆発的に売れ始めてから、日本のレコード会社が扱わせて欲しい・・・と相次いで言ってきたそうだが、結局米RCAとつきあいがあったビクターRCA事業部(後にRVC→BMGビクター→BMGファンハウス→BMGジャパン→SMEと合併して、Sony BMG Music Entertainment )から販売ということになった。
冨田氏によれば、マンヴィス氏は「・・・きっぷがいいというか、神田の江戸っ子ふうというか、親分肌というか『おれに任せとけ』といった、気に入ったらとことんやるというか、アメリカ人としてはめずらしいタイプであった。・・・」という。
このアルバムのリリースには、RCA Red Seal の名プロデューサー、ジョン=ファイファー氏も一枚かんでいる。氏は電子音楽のLPも出しているくらいなので、このアルバム将来性をすぐに感じ取ったのだろう。
John Pfeiffer(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/John_Pfeiffer
しかし、マンヴィス氏も1974年のRCAの政変?でRCAを辞してしまう。同じRCAのプロデューサーであった Max Wilcox氏も この政変でRCAを辞しフリーのプロデューサーとして活躍することになる。んで、我らがマエスト・ジーンとフィラデルフィア管弦楽団の録音は後任の Jay David Saks が担当することになることもご存じの通りである。
1986年にRCAはGEに身売りし、レコード部門をBMGに売却・・・んでもって、現在は Sony BMG Music Entertainment となっているわけだが・・・
RCAに関することをwikipediaから拾うと・・・
Radio Corporation of America
http://en.wikipedia.org/wiki/Radio_Corporation_of_America
http://ja.wikipedia.org/wiki/RCA
RCA Records
http://en.wikipedia.org/wiki/RCA_Records
http://ja.wikipedia.org/wiki/RCA%E3%83%AC%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89
RCAが消滅する原因となったビデオディスク
Capacitance Electronic Disc (CED)
http://en.wikipedia.org/wiki/Capacitance_Electronic_Disc
ついでにビクターのVHDも
http://ja.wikipedia.org/wiki/VHD
ついでにビデオディスクについて
http://en.wikipedia.org/wiki/Videodisc
RCAというと、David Sernoff 、Artur Toscanini、その他当時アメリカを象徴していた人物がぞろぞろ出てくる。
David Sarnoff
http://en.wikipedia.org/wiki/David_Sarnoff
RMS Titanic
http://en.wikipedia.org/wiki/RMS_Titanic
Artur Toscanini
http://en.wikipedia.org/wiki/Arturo_Toscanini
テレビ局のNBCも元々はRCAの子会社だったわけだし・・・
National Broadcasting Company (NBC)
http://en.wikipedia.org/wiki/NBC
RCAの社史がアメリカの歴史の大きな一部であった時代があったわけだ。今では、レコード・ラベルの商標や、真空管アンプのデッドストックとして見かけるくらいかな・・・
そういえば、コンピューター関係も、事務処理用や自動車制御用の組み込みコンピューターとか手を出していたような・・・20年以上前に、RCAロゴのついたキーボードの写真を見た記憶があるのだが・・・
ま、脱線はここまでにしときましょうか・・・
マエストロは決して乗り気でなかったにせよ、依頼仕事はきっちりこなすというプロフェッショナルに徹した見事なできばえのアルバムだと思いますよ。演奏はね。
Super Stereo for the 70's, Dynaflex の文字が40年近い歳月を感じさせますが・・・
このLPは2枚手元にある。1枚は未開封品だが、とってもペラペラでソリが酷い上に恐らくカッティング上のミスであろう。右チャンネルの音が小さく、バランスが左に傾いている。もう一枚は中古だが、盤はしっかりしており、音のバランスも修正されている。これなら聴ける。
日本でも数年前にCD化されました。米盤のどぎついCDデザインでないのが救いですが、まだあるかなあ・・・
BMGファンハウス BVCC-37324
「イエスタデイ~オーケストラが奏でる愛のテーマ」(CD)
米LPオリジナルジャケット仕様
んでは。
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