Levine conducts Mahler's Symphony no.92009年09月19日 06時32分

RVC/RCA Red Seal RVC-2302/3 No Dog Label 2LPs
RVC/RCA Red Seal RVC-2302/3 No Dog Label 2LPs (P)1980
Mahler Symphony no.9
James Levine conducts The Philadelphia Orchestra
recorded at Scottish Rite Cathedral, Philadelphia, Jan, 1979

originally released as 米RCA Red Seal ARL2-3461 2LPs

also available on CDs
米RCA Red Seal RCD2-3461 2CDs (P)(C)1979
BMG ファンハウス/RCA Red Seal BVCC-38137/8 2CDs (C)2001

10年程前、レヴァインがフィラデルフィアを振ったレコードの存在を知りませんでした・・・調べてみて、シューマンの交響曲全集・マーラーの5番、9番、10番があることを知りました。色々探して、シューマンとマーラーの5番・9番はなんとか入手しましたが、10番は・・・見つかりませんでしたねえ・・・

マーラーの5番は以前取り上げましたね・・・

オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団の黄金期を支えたホルン奏者 その2
http://boukyaku.asablo.jp/blog/2009/02/24/4137576

・・・その後の2001年、BMGファンハウスがレヴァインのマーラー交響曲集をまとめてCD化してくれたので容易に入手出来るようになりましたが・・・それも、もう8年前・・・そんな前の事だったか・・・

この演奏を初めて聴いたのも10年程前のこと、どうしても聴きたくて、色々探しまくって ようやく Berkshire Record Outlet 米RCA盤を見つけました。最近は利用してませんが、昔はここで良くCDをオーダーしたもんです・・・

Berkshire Record Outlet
http://www.berkshirerecordoutlet.com/

アウトレット品なので、CDケース裏側の片隅にドリルで開けた穴がありましたが、ようやく探し当てたCDだったので、ケースを交換して喜び勇んで聴きました・・・10年前はそんなことやってたんですなあ・・・

そうして聴いたこの演奏は驚くべきものでした。特に4楽章の妖しいまでの美しさには・・・

・・・で、最近になってこの演奏をLPで聴きたくなって、Yahooオークションで見つけたLPを落札して聴いてがっかり。見た目の状態はいいのですが、よく見ると結構キズが・・・洗浄はしてあったようですが、スクラッチが多い・・・

・・・それから一ヶ月もしないある日、たまたま寄ったバナナレコードで、コイツの美盤を・・・しかも帯付きで手頃な値段・・・まあ、こういう事もあるわな・・・

バナナレコード
http://www.bananarecord.com/

んで、そのLPをレイカでクリーニングしてから、いまその4楽章を聴きながらこのブログを書いてます・・・やはり妖しいまでに美しい・・・この演奏を聴いてから、他の演奏を聴かなくなってしまいました・・・もう満腹で聴く気にならんのですわ・・・

ちなみにこの演奏、マーラー5番と同様、吉田秀和氏が当時絶賛していますので、その批評の一部を・・・ちょっと長いですが・・・

「・・・ここで素晴らしいのは、その音が、レヴァインが作曲者の指示、指定を厳しく最も忠実に守りながら演奏を進めているところから生まれていることである。彼は《無骨に、粗野に》とあれば、それに従い、《息絶えんばかりに》とあればほとんど死なんばかりの響きとなる。その他、管楽器の音の出る際の摩擦音から、弦楽器の弓使いの変化等々に至るまで、マーラーが望んだ全てを、総力を上げて、実現するのに努めている。其処には、一種の『やるせなさの限りのなげやり』といったものにさえ欠けていない。その結果どうなったか? 驚くべき音楽が鳴り出した。単純から複雑に至る変化の未聞の豊かさもさることながら、音の極限に到達したことにより、ついに音をつきぬけ、もうひとつ上の、音を超えた世界を予感さすところまできた音楽が、である。・・・」(音楽展望1980.11.21 より)

あとはご自身の耳でお確かめ下さいな・・・では。

XRCDシリーズ、RCA音源最後の復刻!・・・だそうです。2009年09月19日 07時04分

残念ですなあ・・・

HMV-XRCDシリーズ、RCA音源最後の復刻!
http://www.hmv.co.jp/news/article/909090091/

RCA Red Seal のオーマンディ・フィラデルフィアの音源がXRCDシリーズで今後も出るかと思ってたんですが・・・

・・・ま、しょうがないですなあ・・・では。

Levine conducts Mahler's Symphony no.10 その32009年09月19日 17時20分

独RCA Red Seal RL03726 2LPs
独RCA Red Seal RL03726 2LPs (P)1981

Mahler Symphony no.10
http://en.wikipedia.org/wiki/Symphony_No._10_%28Mahler%29

Second performing version (1966–1972; appeared in print in 1976) of the Draft for the 10th Symphony, prepared by Deryck Cooke
http://en.wikipedia.org/wiki/Deryck_Cooke

James Levine conducts The Philadelphia Orchestra
http://en.wikipedia.org/wiki/James_Levine

recorded at Scottish Rite Cathedral, Philadelphia,
Jan, 1978(1st Mov.) & Apr.1980(2nd-5th Mov.)

other LPs
米RCA Red Seal CTC2-3726 2LPs (C)1981
RVC/RCA Red Seal RCL-8036/7 2LPs (P)1981

also available on CDs
米RCA Red Seal RCD2-4553 2CDs
BMG ファンハウス/RCA Red Seal BVCC-38139/40 2CDs (C)2001

最後は独RCA盤。こちらは日米盤と異なり、日米盤のジャケット裏写真を表に持ってきている。何故、日米盤と同じデザインにしなかったのかは謎である。まあ、どうでもいいんだけど。

日本盤はダブルジャケット、米盤は変則ジャケット、独盤はボックス仕様と、それぞれの国で形態が異なるのが妙と言えば妙であるが・・・

Uwe Kraemer によるドイツ語の解説、Jack Diether による英語解説の要約、そしてフランス語らしい解説が付いている。ヨーロッパのLPはこの頃から3カ国語対応なのだったかなあ・・・

こちらも米盤と同じように、レコードラベルに DIGITAL の文字が印刷してある。ラベルに印刷しないのは日本盤だけだが・・・

さて、演奏の方ですが・・・1965年のオーマンディ・フィラデルフィアと1978年~1980年のレヴァイン・フィラデルフィア(まだまだオーマンディの影響が色濃く残っている)・・・クック版の2ndと3rdバージョンの違いはあれど、甲乙付けがたい出来ではないでしょうか・・・

・・・それにしても疲れました・・・では。(了)

Levine conducts Mahler's Symphony no.10 その22009年09月19日 17時25分

RVC/RCA Red Seal RCL-8036/7 2LPs
RVC/RCA Red Seal RCL-8036/7 2LPs (P)1981

Mahler Symphony no.10
http://en.wikipedia.org/wiki/Symphony_No._10_%28Mahler%29

Second performing version (1966–1972; appeared in print in 1976) of the Draft for the 10th Symphony, prepared by Deryck Cooke
http://en.wikipedia.org/wiki/Deryck_Cooke

James Levine conducts The Philadelphia Orchestra
http://en.wikipedia.org/wiki/James_Levine

recorded at Scottish Rite Cathedral, Philadelphia,
Jan, 1978(1st Mov.) & Apr.1980(2nd-5th Mov.)

other LPs
米RCA Red Seal CTC2-3726 2LPs (C)1981
独RCA Red Seal RL03726 2LPs (P)1981

also available on CDs
米RCA Red Seal RCD2-4553 2CDs
BMG ファンハウス/RCA Red Seal BVCC-38139/40 2CDs (C)2001

こちらは国内盤LPです。解説の最初は諸井誠氏によるこのシンフォニーの経緯の概略ですが・・・オーマンディ・フィラデルフィアの First Version アメリカ初演に言及していますが、その演奏のレコードのことをご存じなかったようだ・・・。オーマンディ・フィラデルフィアがこの曲を録音していない(と思っている)ことを残念に思い、このシンフォニーのクック版全曲がようやくこのレコードで聴けると素直に「驚喜」しているのだから。

つまり、オーマンディ・フィラデルフィアによるこのシンフォニーのアメリカ初演と世界初録音は日本では殆ど知られていなかった・・・ということになるのだろう。諸井氏もレコード会社(自分の会社が売っているアーティストにもかかわらず)も知らなかったわけだから・・・オーマンディ・フィラデルフィアのレコードは国内盤(日本コロムビア OS-704/5、CBS/SONY は不明)で発売されているはずだが・・・?

諸井氏の解説の後に、米国盤のジャック=ディーサーによる解説(日本語訳)がついており、訳者の一人(三浦敦史氏)による「デリック=クック小史」が付記されている。

2001年の国内盤CDでは、諸井氏の解説は割愛されているがそれ以外の解説は若干手を加えて再利用されている。

ジャケット・デザインは米国盤と若干異なるが、やはりディジタル録音が珍しい時代なので、波形サンプリングのイメージをジャケット画に重ねているのが時代を感じさせる。

(その3に続く)

Levine conducts Mahler's Symphony no.10 その12009年09月19日 17時30分

米RCA Red Seal CTC2-3726 2LPs
米RCA Red Seal CTC2-3726 2LPs (C)1981

Mahler Symphony no.10
http://en.wikipedia.org/wiki/Symphony_No._10_%28Mahler%29

交響曲第10番 (マーラー)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC10%E7%95%AA_%28%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC%29

Second performing version (1966–1972; appeared in print in 1976) of the Draft for the 10th Symphony, prepared by Deryck Cooke
http://en.wikipedia.org/wiki/Deryck_Cooke

James Levine conducts The Philadelphia Orchestra
http://en.wikipedia.org/wiki/James_Levine

recorded at Scottish Rite Cathedral, Philadelphia,
Jan, 1978(1st Mov.) & Apr.1980(2nd-5th Mov.)

other LPs
RVC/RCA Red Seal RCL-8036/7 2LPs (P)1981
独RCA Red Seal RL03726 2LPs (P)1981

also available on CDs
米RCA Red Seal RCD2-4553 2CDs
BMG ファンハウス/RCA Red Seal BVCC-38139/40 2CDs (C)2001

未完に終わったマーラーの交響曲第10番をとりあえず聴ける形に実体化(Realization)しようとして、英国のデリック=クックが、遺されたスコアやスケッチから演奏用バージョン(performing version)を作成している。

これは復元(Restore)して完成・・・ではなく、あくまで演奏用暫定版なので「補筆完成版」と言うのはクックの意図に反することらしい・・・わざわざ演奏用バージョン(performing version)と断っているのはそういうことだそうだ・・・

英語でハッキリと performing version と明記されているのだが、日本ではどうもその意図が無視されている・・・ということらしい・・・

・・・で、英語圏と日本では、クックによる演奏用バージョンの言い方が異なり、なんともややこしい事態になっている

実際、米LP盤と国内CD盤の双方の解説を読むと頭が混乱する。

「いったい、この演奏のバージョンはどれ?」

wikipedia や LP・CDの解説を総合すると、どうやらこんな風になっているようだ・・・

Summary of the Cooke versions
Cooke's performing editions of the Tenth Symphony may be summarised as follows:

Cooke "0" – (1960, unpublished) (注:Incomplete Version)
BBC performance, completed 1st, 3rd and 5th movements plus fragments from 2nd and 4th movements; presented as part of a lecture-demonstration

この不完全な「未完全版」が日本では「第1稿」と呼ばれている。

Cooke I – first complete performing version (1960–1964; unpublished)
Premiered on 13 August 1964 by Berthold Goldschmidt; basis for the recordings by Eugene Ormandy (1965/66) and Martinon (1966)

First Version、つまり最初の演奏用完全版が日本では「第2稿」と呼ばれる。「第2稿」ではどんな位置づけになるのか分からん・・・オーマンディ・フィラデルフィアの米国初演と世界初録音はこのFirst Versionによるもの。

Cooke II – second performing version (1966–1972; appeared in print in 1976)
premiered on 15 October 1972 by Wyn Morris[5]; basis for all recordings from 1972 to 1992

この Second Version が日本で言う「第3稿(最終稿)第1版」になる。今回のレヴァイン&フィラデルフィアの演奏もこれだ。

Cooke III – basically a reprint of the 1976 score (printed in 1989)
various reading errors corrected, some minor changes made in orchestration, and the whole enhanced by considerations concerning performance; the editorial input coming from David and Colin Matthews and Berthold Goldschmidt

Third Version。日本で言う「第3稿(最終稿)第2版」になる。

簡単に書くと・・・

Cooke 0(Imconplete Version) - 「第1稿」
Cooke I(First Version) - 「第2稿」
Cooke II(Second Version) - 「第3稿(最終稿)第1版」
Cooke III(Third Version) - 「第3稿(最終稿)第2版」

なる程、こりゃ混乱するわけだワ・・・完成した年と出版した年が離れていたりして、どっちがどっち?と訳分からなくなりそうですが・・・

Cooke II(Second Version) と Cooke III(Third Version) については、

in collaboration with Berthold Goldschmidt, Colin Matthews and David Matthews

ということで、この3人の協力のもとで改訂を行ったそうな。クック自身は1976年8月のインタビューで、Cooke II(Second Version) を "My final version"と言っていたそうだから、これが彼が手がけた最終版ということなのだろう。

Cooke III(Third Version) についてはクックの死後出版されており、彼の死後、ゴルトシュミットとマシューズ兄弟によるさらなる訂正や改訂が加えられた・・・ということか・・・な・・・

あ~慣れないことをすると疲れる・・・音楽じゃなくて「音が苦」になっちまうぜ・・・

さて、今回のレヴァイン&フィラデルフィアの演奏は Second Version (日本では「第3稿(最終稿)第1版」)で演奏されている。市場に出ているCDの演奏の多くはこのクックのSecond Versionの演奏のようだ。

まあ、クック以外にも色々な「演奏用バージョン」があるので、興味のある向きは色々聴き較べるのもまた一興かな?

さて、このレヴァイン・フィラデルフィアの演奏ですが、1楽章だけ1978年に収録され、マーラーの5番と2枚組第4面にカップリングされて世に出ている。(米CD盤も同じ組み合わせ、日本は不明)

その後1980年に残りの楽章が Sound Stream社のディジタル録音で収録され、アナログ録音の1楽章もディジタル・マスタリングして1981年に発売・・・という経過を辿っている。

Sound Stream社
http://en.wikipedia.org/wiki/Soundstream

ま、色々事情があったんでしょうな・・・

まだまだディジタル・レコーディングが「売り」になる頃で、ラベルにも DIGITAL のロゴが・・・ニッパー君が透明スリーヴに印刷されていたり、ジャケットも、真ん中に四角い穴を開けた大きめのジャケットに、LPがそれぞれ1枚ずつ入ったジャケットを2枚を入れる・・・という、ボックスとはまた異なる仕様だし。凝った割には安っぽいような・・・

(その2に続く)