Levine conducts Mahler's Symphony no.10 その12009年09月19日 17時30分

米RCA Red Seal CTC2-3726 2LPs
米RCA Red Seal CTC2-3726 2LPs (C)1981

Mahler Symphony no.10
http://en.wikipedia.org/wiki/Symphony_No._10_%28Mahler%29

交響曲第10番 (マーラー)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC10%E7%95%AA_%28%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC%29

Second performing version (1966–1972; appeared in print in 1976) of the Draft for the 10th Symphony, prepared by Deryck Cooke
http://en.wikipedia.org/wiki/Deryck_Cooke

James Levine conducts The Philadelphia Orchestra
http://en.wikipedia.org/wiki/James_Levine

recorded at Scottish Rite Cathedral, Philadelphia,
Jan, 1978(1st Mov.) & Apr.1980(2nd-5th Mov.)

other LPs
RVC/RCA Red Seal RCL-8036/7 2LPs (P)1981
独RCA Red Seal RL03726 2LPs (P)1981

also available on CDs
米RCA Red Seal RCD2-4553 2CDs
BMG ファンハウス/RCA Red Seal BVCC-38139/40 2CDs (C)2001

未完に終わったマーラーの交響曲第10番をとりあえず聴ける形に実体化(Realization)しようとして、英国のデリック=クックが、遺されたスコアやスケッチから演奏用バージョン(performing version)を作成している。

これは復元(Restore)して完成・・・ではなく、あくまで演奏用暫定版なので「補筆完成版」と言うのはクックの意図に反することらしい・・・わざわざ演奏用バージョン(performing version)と断っているのはそういうことだそうだ・・・

英語でハッキリと performing version と明記されているのだが、日本ではどうもその意図が無視されている・・・ということらしい・・・

・・・で、英語圏と日本では、クックによる演奏用バージョンの言い方が異なり、なんともややこしい事態になっている

実際、米LP盤と国内CD盤の双方の解説を読むと頭が混乱する。

「いったい、この演奏のバージョンはどれ?」

wikipedia や LP・CDの解説を総合すると、どうやらこんな風になっているようだ・・・

Summary of the Cooke versions
Cooke's performing editions of the Tenth Symphony may be summarised as follows:

Cooke "0" – (1960, unpublished) (注:Incomplete Version)
BBC performance, completed 1st, 3rd and 5th movements plus fragments from 2nd and 4th movements; presented as part of a lecture-demonstration

この不完全な「未完全版」が日本では「第1稿」と呼ばれている。

Cooke I – first complete performing version (1960–1964; unpublished)
Premiered on 13 August 1964 by Berthold Goldschmidt; basis for the recordings by Eugene Ormandy (1965/66) and Martinon (1966)

First Version、つまり最初の演奏用完全版が日本では「第2稿」と呼ばれる。「第2稿」ではどんな位置づけになるのか分からん・・・オーマンディ・フィラデルフィアの米国初演と世界初録音はこのFirst Versionによるもの。

Cooke II – second performing version (1966–1972; appeared in print in 1976)
premiered on 15 October 1972 by Wyn Morris[5]; basis for all recordings from 1972 to 1992

この Second Version が日本で言う「第3稿(最終稿)第1版」になる。今回のレヴァイン&フィラデルフィアの演奏もこれだ。

Cooke III – basically a reprint of the 1976 score (printed in 1989)
various reading errors corrected, some minor changes made in orchestration, and the whole enhanced by considerations concerning performance; the editorial input coming from David and Colin Matthews and Berthold Goldschmidt

Third Version。日本で言う「第3稿(最終稿)第2版」になる。

簡単に書くと・・・

Cooke 0(Imconplete Version) - 「第1稿」
Cooke I(First Version) - 「第2稿」
Cooke II(Second Version) - 「第3稿(最終稿)第1版」
Cooke III(Third Version) - 「第3稿(最終稿)第2版」

なる程、こりゃ混乱するわけだワ・・・完成した年と出版した年が離れていたりして、どっちがどっち?と訳分からなくなりそうですが・・・

Cooke II(Second Version) と Cooke III(Third Version) については、

in collaboration with Berthold Goldschmidt, Colin Matthews and David Matthews

ということで、この3人の協力のもとで改訂を行ったそうな。クック自身は1976年8月のインタビューで、Cooke II(Second Version) を "My final version"と言っていたそうだから、これが彼が手がけた最終版ということなのだろう。

Cooke III(Third Version) についてはクックの死後出版されており、彼の死後、ゴルトシュミットとマシューズ兄弟によるさらなる訂正や改訂が加えられた・・・ということか・・・な・・・

あ~慣れないことをすると疲れる・・・音楽じゃなくて「音が苦」になっちまうぜ・・・

さて、今回のレヴァイン&フィラデルフィアの演奏は Second Version (日本では「第3稿(最終稿)第1版」)で演奏されている。市場に出ているCDの演奏の多くはこのクックのSecond Versionの演奏のようだ。

まあ、クック以外にも色々な「演奏用バージョン」があるので、興味のある向きは色々聴き較べるのもまた一興かな?

さて、このレヴァイン・フィラデルフィアの演奏ですが、1楽章だけ1978年に収録され、マーラーの5番と2枚組第4面にカップリングされて世に出ている。(米CD盤も同じ組み合わせ、日本は不明)

その後1980年に残りの楽章が Sound Stream社のディジタル録音で収録され、アナログ録音の1楽章もディジタル・マスタリングして1981年に発売・・・という経過を辿っている。

Sound Stream社
http://en.wikipedia.org/wiki/Soundstream

ま、色々事情があったんでしょうな・・・

まだまだディジタル・レコーディングが「売り」になる頃で、ラベルにも DIGITAL のロゴが・・・ニッパー君が透明スリーヴに印刷されていたり、ジャケットも、真ん中に四角い穴を開けた大きめのジャケットに、LPがそれぞれ1枚ずつ入ったジャケットを2枚を入れる・・・という、ボックスとはまた異なる仕様だし。凝った割には安っぽいような・・・

(その2に続く)

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