雨のコンダクター2009年09月14日 08時00分

CBS/SONY SOCO46
CBS/SONY SOCO46 SQ-Quadraphonic LP (P)1973
Leonard Bernstein's Concert for Peace
Haydn : Mass in time of WAR

Recorded January 20th, 1973 at the Washington National Cathedral
Patricia Wells, Gwendolyn Killebrew, Alan Titus, Michael Devlin
The Morman Scribner Choir
Orchestra Conducted by Leonard Bernstein

Producer : John McClure - His Master's Wheels Recording
Engeneer : Elliot Mazer
Quadraphonic Remix : Rally Keith

手塚治虫「雨のコンダクター」というマンガを読まなければ、このLPを聴くこともなかったですなあ・・・

ちくま文庫「手塚治虫マンガ音楽館」(2002年5月)に収録されていているので手軽に読めます。初出はFMレコパル1974年8月12日号と記載有り・・・当時のFM雑誌は硬派だったんですなあ・・・昔はFMfanをよく読んでたもんですが・・・今はFM雑誌なんて見かけませんな。

LPの解説によると・・・

1973年1月19日、首都ワシントンで2つのコンサートが行われた。一つはニクソン大統領就任式前夜の公式行事としての記念演奏会(オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団によるチャイコの「1812年序曲」他)。もう一つは、ワシントン大聖堂で行われた「平和のためのコンサート」(バーンスタイン指揮)

この2つのコンサートは、「二つに割れたワシントンの気分を反映する二つのコンサート」として、ニューヨーク・タイムズにも取り上げられたそうな・・・

大聖堂のコンサートはバーンスタインが企画し、演奏者はニューヨークから呼んだソリスト4人(無料出演)、オーケストラメンバーは地元でかき集めた50名、そしてノーマン=スクリブナーが短期間で訓練した125名編成の合唱団。演奏者は全員平服で演奏したそうな。

一方、ケネディ・センターの大統領就任記念コンサートでは、空席が目立ち、フィラデルフィア管弦楽団のメンバー16名は演奏を中止するよう求めたが受け入れられなかった・・・という重苦しい雰囲気だったそうな。中止を求めたメンバーの一人は「『序曲1812年』を演奏するなんて、私は映画「キャバレー」を思い出してしまう、雰囲気が1930年代のドイツに酷似している」と言ったというそうな・・・

以上、LP解説(木村英二「現代を生きるバーンスタイン」)より。米Columbiaの解説も読んでみたいものだが・・・

でも、よく考えると、『序曲1812年』って、ロシアを侵略したフランスが撃退されざま-見ろ・・・という曲だから、ベトナムを侵略したアメリカの末路を暗示しているのでは・・・という気もする・・・だとしたら「妥当な」選曲だったかも。

このLPは、その歴史的なコンサート翌日のセッション録音である。コンサート・ライブは収録されなかったのか、それともトラブルで商品化が出来なかったのか・・・こういうのはライブの方がドキュメントとしての価値があると思うが・・・

LPにわざわざ、Producer : John McClure - His Master's Wheels Recording と書いてあるので、CBSとして積極的に収録したワケでもなさそうな・・・

ちなみに、このLPによるバーンスタインの収益は平和のために基金に使われると記載されている。

肝心のハイドンの「戦時のミサ」、力強いが陰鬱な感じは無く、何も知らずに聴けば、結構明るくていい曲じゃん・・・という感じだ。始めはハイドンということで退屈するかな・・・と思ったが、結構イケル。

興味のある方は、手塚治虫のマンガとLPの解説を読みながらこの演奏を聴いてみるのも一興かと・・・

最後に、関係リンクを列記して・・・


手塚治虫(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%8B%E5%A1%9A%E6%B2%BB%E8%99%AB

FMレコパル(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/FM%E3%83%AC%E3%82%B3%E3%83%91%E3%83%AB

Vietnam War(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Vietnam_War

Leonard Bernstein(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Leonard_Bernstein

Joseph Haydn(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Joseph_Haydn

Washington National Cathedral(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Washington_National_Cathedral

Elliot Mazer(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Elliot_Mazer

Richard Nixon(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Richard_Nixon

Spiro Agnew(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Spiro_Agnew

Quadraphonic sound(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Quadraphonic_sound

Matrix decoder(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Matrix_decoder

Columbia Broadcasting System(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Columbia_Broadcast_System

Columbia Records(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Columbia_records

んでは。

雨のコンダクター その22009年09月14日 20時50分

RCA Red Seal LSC-3349
米RCA Red Seal LSC-3349 No Dog Label Dynaflex LP (C)1973
Van Clibuen, Eugene Ormandy & The Philadelphia Orchestra
from their acclaimed recordings of music featured at the
1973 Inaugural Symphonic Concert

Copland : Fanfare for the Common Man
Tchaikovsky : 1812 Overture
Grieg : Piano Concerto in A Minor

「雨のコンダクター」といえば、オーマンディ・ファンには悪評高い?作品なのですが(そりゃそーだ)・・・

オーマンディ掲示板(http://06.teacup.com/qwh01700/bbs)でも話題になったことがあり、それが何時の事やらと過去の記憶を手繰っていくと・・・なんと9年前の2000年8月でしたワ・・・

現在のオーマンディ掲示板には2004年9月以後の書き込みしか残っていないのでそれを見ることは出来ませんが、1999年7月からの書き込みのデータを個人的に保存していたので、それを引っ張り出して、「ああ、こんな事を書いてたなあ・・・」などと感慨に耽っていました。

さらに記憶を辿っていくと、Fantastic Philadelphians の Ichikawa さんが、2000年8月27日の Memorandum でこの時の事情を詳しく説明されていたことを思い出しました・・・

Fantastic Philadelphians
http://www5a.biglobe.ne.jp/~philorch/
→Memorandum August 2000
http://www5a.biglobe.ne.jp/~philorch/Memorandum/0008.html

確かに、The Philadelphia Orchestra - Century of Music(Temple University Press (C)1999) の Ormandy Era 89p にその記述がありますねえ~

Temple University Press
http://www.temple.edu/tempress/

The Philadelphia Orchestra - A Century of Music
http://www.temple.edu/tempress/titles/1492_reg.html

我らがマエストロ・ジーンとオーケストラメンバーも、バーンスタインとはこれまた異なる苦悩に直面していたのです・・・な。誰か、もう一人の「雨のコンダクター」としてマンガ化してくれないかな・・・

ま、それはさておき、過去の記憶を辿ってこの時のプログラムを再確認していると・・・そういえば手元にあるあの訳の分からん1枚の盤・・・

"1973 Inaugural Symphonic Concert" と題したこのLP。一体何を記念したものかさっぱり分からず、数年間ほったらかしていた。何故かというと、 Inaugural という単語の意味を知らず、なんかの記念か?くらいの関心しかなかったのだが・・・

これが、そのニクソン大統領の1973年就任記念演奏会のプログラムを集めたLPだったと、今日初めて気が付いたんですな・・・

・・・ホント、おバカさんである。大体このアルバム、Nixon の 名前すら出てこないから、 まさかアメリカ大統領の就任記念演奏会プログラムLPだなんて想像すら出来なかったのだ。アメリカでは Inaugural と言えば大統領就任という意味になるのだろう・・・か?

就任記念演奏会プログラムの内、ベートーベンの「運命」はRCAに録音が無いので省かれているが、それ以外の3曲(勿論、セッション録音)を収録したこのLPと、バーンスタインのLP、一体どっちが売れたのだろうか・・・

それにしても、意図せずにこんな対照的なLPが揃ってしまうとは・・・なんか不思議な縁と言うヤツを実感せざるを得ませんなあ・・・では。