タワーレコード "Sony Classical" スペシャル・セレクション第9期 第II回 その1 ― 2015年10月31日 06時30分
今年はオーマンディ没後30周年ということで、毎年の恒例?となった、タワレコの「オーマンディ降臨」企画です。
タワーレコード "Sony Classical" スペシャル・セレクション第9期 第II回
流石に初CD化音源は少なくなってきましたが、良く練られた企画かと思います。価格面では輸入盤とは勝負になりませんが、オリジナルLP収録曲目を再現したり、フィラデルフィア管弦楽団と音楽監督(ネゼ=セガン)の最近のエピソードを盛り込んだブックレットの内容は一読の価値があり、これは輸入盤には無い魅力かと・・・
◎SICC-1943
ホルスト:組曲「惑星」作品32
ヴォーン=ウィリアムズ
トーマス・タリスの主題による幻想曲
グリーンスリーヴスによる幻想曲
RCA Red Seal 音源。国内盤LPジャケットデザイン採用というヒネリと「惑星」の音に驚き。LPマスター(初CD化もこのマスターと思われる)の音が収録されているのだ。1995年発売の「100周年記念盤」の音は(落ち着いた方向に)大幅に変わったが、その音に不満を示した人も少なからずいたと思う。今回採用された音源はその意向?を汲んでいるのかもしれませんね。
ちなみに、オーマンディ&フィラデルフィアのRCA Red Seal録音の「惑星」は、私が確認したものでは下記4種類の音が存在します。
1.LP(1976年)と(たぶん)初CD化(1995年)と本CD
2.100周年記念盤Ⅰ(1999年)
3.Dolby Surround Sound盤(1992年)
4.Originals盤(2011年)
私が聴いた限りでは、2.と4.がオリジナル音源(セッション・テープ)に最も近い音と思います。エコーも控えめで落ち着いたバランスの音です。しかし、1.で親しんだ方が2.を聴いたらその落差に驚くでしょう。
1.は2.~4.と較べると、ハイ上がりでエコーが付加され、音の定位も編集で操作している感じがします。(「火星」冒頭のトランペットを聴けば一聴瞭然。)ヘッドホンではちと耳が痛くなりそうな「派手」な音です。広い部屋で、大型スピーカーを置いて距離を置いて聴くとバランスが取れる感じがします。個人的にはローブーストしたくなります。
2.~4.は1.と実に対照的な音です。2.は落ち着いたバランスの音ですが、金管(特にホルン)はもう少しエコーが欲しいなあ・・・なんて思うことも。3.がその希望に沿う音作りで、4.は2.と3.の中間?という感じです。2.~4.はヘッドホンで聴いても違和感はありません。
ちなみに、3.のDolby Surround SoundシリーズはVirgil Foxと競演した「オルガン交響曲」もあります。
ヴォーン=ウィリアムズの2曲は、オーマンディが苦心して育て上げたフィラデルフィアの「弦」の魅力を楽しめる、おなじみの名演奏です。
◎SICC-1944(2CDs)
ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調作品27[完全全曲版]
スクリャービン:法悦の詩作品54(交響曲第4番)
ラフマニノフ:
合唱交響曲「鐘」作品35[英語歌唱]
3つのロシアの歌作品41[英語歌唱]
スクリャービン:プロメテウス~火の詩作品60(交響曲第5番)
RCA Red Seal 音源。オーマンディ&フィラデルフィアのこの「ラフ2」を聴かずしてこの曲を語る無かれ・・・と言いたくなるくらいの名演。当時のエピソードから最近のトピックまで網羅したブックレットの内容に脱帽。その他、ラフマニノフの合唱曲やスクリャービンの作品も聴きモノ。
1968年のHistrical Return、Columbia Masterworks専属からRCA Red Seal専属への「里帰り」を経て数年、「ラフ2」以外はColumbiaに録音していない意欲的な曲目であり、当時のレコード業界・RCA Red Seal のA&R方針・オーマンディ&フィラデルフィアの「思惑」等々、考えながら聴くのもまた一興。
◎SICC-1946(2CDs)
チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「眠りの森の美女」名場面集(通常盤)
日本では”「くるみ割り人形」組曲”の形でしかCD化されていなかった全曲からの「抜粋版」が、ようやく理想的な形で企画されて嬉しいですな。組曲に入ってない魅力的な曲が満載の「くるみ割り人形」抜粋を聴かないのは実に惜しいですから。
「くるみ割り人形」抜粋版、アメリカでは1990年に早々とCD化され、2003年にはExpandedシリーズとしてCD化(DSD→SBM)されて更に良い音になりました。ちなみに、このExpanded盤のブックレットには貴重な写真が掲載されていますので、興味のある方は如何でしょうか?
◎SICC-1948(2CDs) 華麗なるバレエ名演集
オッフェンバック/ロザンタール編:バレエ「パリの喜び」(抜粋)
ショパン/ダグラス編:バレエ音楽「レ・シルフィード」
アダン:バレエ「ジゼル」組曲
マイヤベーア:バレエ「スケートをする人々」組曲
ロッシーニ/レスピーギ編:バレエ「風変わりな店」
ドリーブ:バレエ組曲「シルヴィア」「コッペリア」
ストラヴィンスキー
バレエ組曲「ペトルーシュカ」(1911年全曲版より抜粋)
バレエ「パリの喜び」、冒頭から G.ジョンソンの輝かしいソロ・トランペットが鳴り響き、あっという間に軽妙なオッフェンバックの世界に引き込まれます。唖然とするほど凄い演奏なんですが、十分余力を残した上でのオーケストラ演奏なので、あっという間に聴きとおしてしまい、改めて聴きなおすとその凄さを実感する・・・といった感じです。ちなみに、1954年録音のモノラル録音も素晴らしい演奏なので是非CD化して欲しいものですが・・・
ストラヴィンスキーのバレエ組曲「ペトルーシュカ」、オーケストラを3管編成に縮小した1947年組曲版ではなく、1911年の4管編成全曲版からの抜粋というのがミソ。
◎SICC-1950
ドビュッシー
交響詩「海」、牧神の午後への前奏曲
舞曲(シチリア風タランテラ)[ラヴェル編]、夜想曲
「牧神の午後への前奏曲」はウィリアム・キンケイドの見事なフルート・ソロが聴けます。牧神・・・はゆったりしたテンポが好みなのですが、オーマンディとキンケイドは早めのテンポで颯爽とした印象を残す好演。1959年当時にこれほどのアンサンブルが存在していたとは・・・一昨年発売された「ダフニスとクロエ」第2組曲・昨年発売された、「カルメン」組曲でもキンケイドが見事なソロを聴かせてくれます。
続きはまた・・・んでは。
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