タワーレコード "Sony Classical" スペシャル・セレクション第9期 第II回 その2 ― 2015年10月31日 17時20分
タワーレコード "Sony Classical" スペシャル・セレクション第9期 第II回
流石に初CD化音源は少なくなってきましたが、良く練られた企画かと思います。価格面では輸入盤とは勝負になりませんが、オリジナルLP収録曲目を再現したり、フィラデルフィア管弦楽団と音楽監督(ネゼ=セガン)の最近のエピソードを盛り込んだブックレットの内容は一読の価値があり、これは輸入盤には無い魅力かと・・・
◎SICC-1951 Rhapsodies
リスト:
ハンガリー狂詩曲第2番ハ短調
ハンガリー狂詩曲第1番ヘ短調
エネスコ:
ルーマニア狂詩曲第1番イ長調作品11の1
ルーマニア狂詩曲第2番ニ長調作品11の2
アルフェーン:スウェーデン狂詩曲第1番「真夏の徹夜祭」
シャブリエ:狂詩曲「スペイン」
「・・・グラスを手にヴァイオリンに耳を傾ける女性を配したジャケット・デザイン・・・」 LP・CD時代を含め、このオリジナル・ジャケットが日本で出たのは今回が初めてではないだろうか。初出当時、このデザインで日本盤を出したら、恐らく(真面目な)日本のクラシックファンから総スカンを喰らったであろうと思われる、いかにも当時のアメリカのジャケットデザインとも言える・・・かな?
実は、リストの「ハンガリー狂詩曲第2番」とエネスコの「ルーマニア狂詩曲第1番」は、ストコフスキのRCA Victor LIVING STEREO盤「Rhapsodies」(実際は、国内廉価盤Lpで聴いたのが最初ですが・・・) の強烈演奏が初体験なので、こればかりはオーマンディ&フィラデルフィアの演奏とも言えども、マイ・ベストにはならないのだ・・・最初聴いたときは、端整ではあるけど、ストコフスキのダイナミズム溢れる演奏には及ばないなあ・・・なんて思ったけど、今聴き直すと、これはこれでマエストロの音楽性が良く出ていて微笑ましくなる。
ハンガリー出身とは言え、若くして祖国を離れて数十年・・・いくら出身地とは言えども、地元のロマに音楽を習ったわけでも無いだろうし、私達「外国人」が漠然とイメージする「本場モノ」を期待するのはどうかなあ・・・という気がする。(日本人なら、日本の民謡くらい歌えるだろう・・・なんて外国人に言われたら・・・と想像して頂ければ、ワタシの言っていることのイメージをご理解頂けるかと・・・)
ま、そんなことはどうでもいいことで、素直に耳を傾けると、これはこれでなかなか良いんじゃないかな・・・と、最近は思えるようになってきた次第。
◎SICC-1952 Holiday for Orchestra! (オーケストラの休日)
CD創世記の1980年代前半、同じタイトルのCDがCBS/SONYから発売されている。「CDによる初のベスト・クラシック100」とあり、当時のCDとしては\3,000(悪税無し)と価格を抑えての発売だったと記憶している。
恐らく、国内盤LPのジャケットデザインとカップリング+αでCD化したものと思われるが、その国内盤LPが既に米オリジナル盤と異なるジャケットデザインとカップリングだったのだろう・・・米オリジナル盤の企画や意図は殆ど考慮されず、親しみやすいがちょっと変わった「オーケストラ名曲集」くらいのコンセプトで日本盤として再構成された・・・というところだろうか。
・・・今回のオリジナルジャケットデザインとカップリングによるCD化により、「フィラデルフィア管弦楽団の機能をデモ」するという当初のアルバムの意図が、日本のリスナーにも正しく?伝わることになったと言える。
ベンジャミン「ジャマイカン・ルンバ」を聴くと「サロンパス」のCMソングを思い出してしまうのはワタシだけであろうか・・・
◎SICC-1953 The Romantic Philadelphia Strings
ワタシ的には、今回のタワレコ「オーマンディ降臨」企画の目玉とも言えるアルバムなのです。漸く、Anshel Brusilowの見事なヴァイオリン・ソロとオーマンディ&フィラデルフィアの圧倒的な量感を誇る弦セクションの伴奏による「タイースの瞑想曲」(1966年録音)が、まともな音でCD化されたのですから・・・
これまで、熱心なファンを「何時になったらCD化されるのだろうか・・・?」とヤキモキさせつつ、何故かCD化から零れ落ちていた不思議な経緯を辿っている「名演」でありました。
2008年6月~7月にかけてSMEからリリースされた、"The Original Jacket Collection" で、今回と同じ "The Romantic Philadelphia Strings"がオリジナル・ジャケット・デザインで(ジャケット裏のライナー・ノーツ迄忠実に!)CD化されたにも関わらず、何故かこの「タイースの瞑想曲」1曲のみが抜け落ちていて、熱心なファンをガッカリさせたのは記憶に新しい・・・って、あれからもう6年以上経過しているのに気が付いて、今更ながら驚きました。
2006年に Sony Music Direct からリリースされた "Love Story - Classical Music from Korean TV drams & Movies" という3枚組のコンピレーション・アルバムCDにこの音源が収録されたのですが、ノイズ除去をやりすぎたせいか、あの芳醇なBrusilowのヴァイオリン・ソロとオーマンディ&フィラデルフィアの弦セクションの音が、ぎすぎすした潤いの無い音に変わり果ててしまった・・・という苦い経験があったので、今回のCD化でもそれを一番心配していましたが・・・。有難い事に、それは杞憂に終わったようです。
過度なノイズ除去は見送られたようで、テープ・ヒス・ノイズや録音会場であったのフィラデルフィア・タウン・ホール屋外の車の騒音もかすかに聴こえてきますが、ノイズ除去しすぎた潤いの無い音より、ノイズ込みでも芳醇な音で聴けるほうが良いと思いますよ。
何はともあれ、オーマンディが苦心して維持していた「フィラデルフィアの弦セクションの音」を愉しむ好適なアルバムと言えますな。
ちなみに、 Brusilow は最近 Shoot the Conductor: Too Close to Monteux, Szell, and Ormandy(2015年6月) という興味深い本を書いています。興味のある方は如何でしょうか?
◎SICC-1954 マーチの祭典
このアルバムを見た時「う~ん、マーチ集か・・・」と、ガッカリしたのが正直なところ。スーザ「星条旗よ永遠なれ」(Columbiaステレオ録音)の初CD化が目玉なワケだけど、正直「それだけ?」と思ってました。
しかし、アルバムを手にとって解説を読んでみて、これは実に良く練られた企画だ・・・と得心した次第。確かに、これまで Columbiaステレオ録音 のマーチ集は「星条旗よ永遠なれ」以外は全てCD化されていたのですが、他の演奏者とのコンピレーション盤とかマーチ以外の曲との組み合わせ等々が殆どで、今回のような「オリジナルLp2枚分をそのままのカップリングで纏めてCD化」というのは初めての試みでしょう。
こうして、オリジナルLpのカップリングで纏めて聴いてみると、当時のアルバムの企画意図が明快に理解出来て、実に興味深いのです。まったく、タワレコさんとSony Musicの企画担当者には足を向けて寝られませんな。
◎SICC-1956
ベートーヴェン:「ミサ・ソレムニス」「オリーヴ山上のキリスト」
ブルックナー:テ・デウム(初CD化)
このアルバムの目玉は初CD化となるブルックナー「テ・デウム」でしょう。一昨年のタワー・レコード “Sony Classical”スペシャル・セレクション第7期Ⅱ期にて、米オリジナルLpでは「ブル5」とカップリングされていた「テ・デウム」が見送られて、既出のブル4と組み合わせた2枚組みとして企画されたのをちと残念に思っていましたが・・・売り上げを考えると仕方ないのかな・・・と諦めてましたが、ベートーヴェンの合唱曲と組み合わせて出すというのは思いもよらぬ「変化球」で、こりゃ一本とられたなあ・・・と感心した次第。
ファンとしては「未CD化」の音源を優先して出して欲しい・・・という願いがあるのですが、売り上げを考えると、こうした「戦略」が必要だと改めて考えさせられます。結局、売れなければ「オーマンディ降臨」企画も続かないのですから・・・
また来年もタワレコさんに期待するところ大ですな・・・んでは。
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