Ormandy & Philadelphia - 1812 Overture & Wellington's Victory ― 2009年07月10日 07時50分
Originally released as 米RCA Red Seal LSC-3204
also available on CD BMGファンハウス/RCA Red Seal BVCC-38126
Tchaikovsky : 1812 Overture, Beethoven : Wellington's Victory
Eugene Ormandy / The Philadelphia Orchestra
音楽のこととはいえ、最近戦争づいてるなあ・・・
※「さいきんせんそう」で変換したら最初に「細菌戦争」と出てしまった・・・ナニを考えている>ATOK
まあ、セミの声を聴きながらレコードを聴くのもなかなかおつなもの・・・夏だなあ・・・キンチョウの夏、日本の夏・・・
キンチョウ
http://www.kincho.co.jp/
これは、プロデューサー Max Wilcox にとっての、Ormandy/Philadelphia との最初の録音である。1970年11月16日に行われたセッションにより、この2曲が収録されている。スケジュールの都合上、最初に1812年の合唱が入る箇所(最初と最後のクライマックス)を録ったそうな。(BMGファンハウス/RCA Red Seal BVCC-38125 の解説より)
LP,そしてCDの、Max Wilcox による ライナーノーツ もなかなか面白い。セッション録音の「戦場」みたいな模様がよく分かる。アルバムには、
SUPER STEREO FOR THE '70s
A spectacular using the newest
multi-channel recording techniques
とあり、マルチトラックレコーダーによる録音がこの当時はまだ珍しかったのだろうか・・・。このセッションには、2台の8trackテープレコーダー2台と16台のドルビーA-301ノイズ・リダクション・ユニットを使用している。ドルビーも導入されて間もない頃だったのだろう。
ドルビーノイズリダクションシステム(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%83%AA%E3%83%80%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0
そういえば、カセットテープのドルビーも懐かしいなあ・・・
1812年の冒頭はロシア聖歌「神よ、民を救い給え」で始まる。カラヤン/ベルリン・フィルの録音もそうだったかな。大砲の音は電子音合成によるもの(エレクトリック・キャノン)で、オーディオファイル向けではないが安心して聴ける。
ロシア正教(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E6%AD%A3%E6%95%99%E4%BC%9A
演奏はどっしりとして重心が低く、ど派手な効果を期待する向きには物足りなが、語り口のうまさには唸らされる。やはりこのコンビは凄い。
ウィルコックスはLPジャケットの謳い文句とは裏腹に「結局、ナチュラルなバランスが一番なのである」と書いており、RCA Red Seal の方針との微妙な齟齬がなんとなくおかしい。
最初に大砲が轟くところは、オケの音量が若干下がり(編集とミキシングによるものか)、大砲をクローズアップしているが、スピーカーが心配になるほどの大音量ではない。とはいえ、結構良い感じで「大砲」している。
「ブラス」と「教会の鐘」と共に合唱が活躍するのは珍しいかな?この合唱は大砲をぶっ放している最中も歌っており、こういう演出は他には無いのでは・・・と思う。
「ウェリントンの勝利」も大砲はエレクトリック・キャノンであるが、銃の音はパーカッションの「カラカラ」とする音(楽器は不明)で代用されており、ハッキリ言ってしょぼい。これも電子音合成すれば良かったのに・・・
非常にオーソドックス?な演奏による1812年と「ウェリントンの勝利」で、当時のオーディオブームに逆行するような演奏と音作りが微笑ましい・・・が収録からほぼ40年後の現在の耳で聞くと、ウィルコックスの言葉ではないが「結局、ナチュラルなバランスが一番なのである」ということだろう。
ちなみにこの2曲、1988年に一度CD化されている(米BMG Music/RCA VICTROLA 7731-2-RV)が、この際、「ウェリントンの勝利」はエレクトリック・キャノンの音を置き去りにしてしまったようで、しょぼい「カラカラ」マスケットしか入っていない「珍品」に仕上がっている。
ま、それはさておき、この1812年と「ウェリントンの勝利」の背景をいろいろ考えて想像しながら聴くとより楽しめると思う。
「・・・前半はビトリアの戦いを再現したもので、左右からそれぞれの行進ドラムと進軍ラッパに続いてイギリス軍を表す「ルール・ブリタニア」とフランス軍を表すフランス民謡「マールボロ将軍は戦争に行く(マールボロ行進曲)」"Malbrough s'en va-t-en guerre"が現れ、激しくぶつかり合い、やがてフランス軍が撤退していく(短調にアレンジされたマールボロ行進曲)。後半はイギリス軍の勝利を祝う華々しい凱歌(イギリス国歌の変形、原型も顔を出す)となっている。」(wikipedia「ウェリントンの勝利」より)
マールボロというと、タバコのブランドを連想してしまうが、マールバラ公という貴族なんですな。欧米の貴族の系譜と歴史は奥が深すぎて狂気の世界だからよ~わかりまへんが・・・
(マールボロ行進曲)」"Malbrough s'en va-t-en guerre"(wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Marlbrough_s%27en_va-t-en_guerre
マールバラ公(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%A9%E5%85%AC
マールボロ (タバコ)(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9C%E3%83%AD_%28%E3%82%BF%E3%83%90%E3%82%B3%29
これがこの曲の「フランス軍」のテーマなんですな。ベートーヴェンの時代には結構歌われたんかしらん?もう一方のイギリス軍の方は愛国歌『ルール・ブリタニア』(Rule, Britannia!, 統べよ、ブリタニア)である。
ルール・ブリタニア(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AA%E3%82%BF%E3%83%8B%E3%82%A2
この2曲をうまく使って、イギリス軍がフランス軍を敗退に追い込む描写のうまさは流石ベートーベンというところか。さりげなく、"God Save the Queen "を挿入しているのもニクイ。
女王陛下万歳(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E9%99%9B%E4%B8%8B%E4%B8%87%E6%AD%B3
ちなみに、この曲が初演された1813年から2年後の1815年、ワーテルローの戦いでナポちゃんはコテンパンにやっつけられる羽目に・・・
ワーテルローの戦い(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84
この戦いの後で、何故ベートーベンが「ワーテルローの勝利」という曲を作らなかったのかは謎である。「ウェリントンの勝利」が好評だったのだから、もう一発当てることも出来ただろうに・・・
一方、チャイコの1812年の方は、「ロシア聖歌」「神よツァーリを護り給え」と「ラ・マルセイエーズ」のバトルで、これまたチャイコの作曲技法の巧みさが光る。
ラ・マルセイエーズ(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%82%BA
神よツァーリを護り給え(ロシア帝国国歌)(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E3%82%88%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%92%E8%AD%B7%E3%82%8A%E7%B5%A6%E3%81%88
この時代とこの2曲、一度はナポちゃんにやっつけられて復讐心にかられた「戦争論」のクラウゼヴィッツがロシア軍の戦争顧問として登場したり、それを描写したトルストイの「戦争と平和」があったりと、色々絡みがあってなかなか興味深い。
カール・フォン・クラウゼヴィッツ(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%82%BC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%84
戦争論 (クラウゼヴィッツ)(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E4%BA%89%E8%AB%96_%28%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%82%BC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%84%29
この「戦争論」を真理と信じ込んで戦争ビジネスに邁進している奴らが多いから、世の中から侵略や戦争が無くならん・・・困ったことである。ちったあ反省せい>クラウゼヴィッツ(同姓の別人さん、いたらごめん)
レフ・トルストイ(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%A4
戦争と平和(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%A8%E5%B9%B3%E5%92%8C
ロシアもドイツもフランスも奥が深いなあ・・・んでは。
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