Yannick Nézet-Séguin と Philadelphia の新譜 ― 2013年09月03日 05時30分
『ネゼ=セガン/ストラヴィンスキー&ストコフスキー』
・曲目
ストラヴィンスキー: バレエ《春の祭典》
ストラヴィンスキー(ストコフスキー編): パストラーレ
J.S.バッハ(ストコフスキー編曲)
トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582
小フーガ ト短調 BWV578
・録音
2013年3月 フィラデルフィア キンメル・センター、ヴェリゾン・ホール
竹内貴久雄著「クラシック幻盤 偏執譜」を読んで(yamaha 2012年7月) ― 2013年09月07日 05時40分
クラシック幻盤 偏執譜
竹内貴久雄 著(yamaha 2012年7月)
ふと手に取って、読んだらなかなか面白かったので、購入して自宅でゆっくり読んでみると・・・次の項目を読んで驚いてしまった・・・
第3章 指揮者たちのカレイドスコープ
-20世紀演奏のクリップボード・第一
ユージン・オーマンディ
ロマン派の終焉を予感する「自意識の不可思議な欠落」
・・・なんとも懐かしい!というか・・・
事の発端?は「名指揮者120人のコレを聴け!」(洋泉社 1996年)の竹内貴久雄氏によるOrmandy紹介記事。これを読んだ私は全く納得することが出来ず、自身のホームページに下記の文章を記載した。こちらのブログの方がアクセスしやすいので、当時の記事をそのまま再掲します。但し、誤字や氏の名前の誤りは訂正してあります。名前の誤りはこちらの失態であり、申し訳無いことで、お詫び致します。(氏の本を読んで、氏のブログの存在に初めて気が付き、アクセスしてようやく氏の名前を誤記していることに気が付きました。記事を書いてから10年以上経過して・・・なんともお恥ずかしい次第で・・・)
-------------再掲ここから-------------
・「名指揮者120人のコレを聴け!」を読んで
洋泉社より出版されている「名指揮者120人のコレを聴け!」の竹内貴久雄氏のOrmandyの記事を読んで、どうにも納得のいかない内容に疑問を抱いております。
Ormandyを理解するキーワードとして、
「指揮者になりたくなかった指揮者」
「全員参加、全会一致の音楽」
とあり、さらに特記事項として
「細部への執着は、楽員に順番に出番を回そうとする気配りから?」
とありますが、冗談にしてもこれはなんと言えば良いのか・・・。確かに、Ormandyは天才ヴァイオリニストとしてアメリカに渡って、本人の意志とは無関係に指揮者のスタートを切りましたが、それはスタートのみの話であり、指揮者として身を立ててからは、
「私は指揮者以外のものになりたくなかったから、指揮者になったのである」
と言うほどに指揮者を天職として考えていた訳ですし、
「私は個性的なアプローチを尊ぶが、演奏は結局、指揮者の解釈である。楽員は指揮者の楽器であり、最後の目標は統一とチームワークでなければならない」
「私は、民主的な独裁者です」
との彼自身の指揮者についての考えを示す言葉を無視して、「全員参加、全会一致の音楽」・「細部への執着は、楽員に順番に・・」というのは、全く的外れな評価だと思いまが・・・・
「・・・チャイコフスキーの交響曲は、サウンドのまとまりは良いものの、いったい何を伝えたいのかがわからない。それぞれのパートがどれも等距離に置かれていて、楽員が公平に分担しているといった不思議な風情をもった演奏だ。内声部が良く鳴っている演奏というのとも違う。だれにでも多少はある特定の音への偏愛、こだわりがオーマンディにはないのは、なぜだろうか?オーマンディはひたすら黙々と、淡々と、指揮を続けている。・・・」
「・・・《新世界交響曲》は、CBSのステレオ録音はオーマンディでは例外的にフィラデルフィア管を離れてロンドン響との録音だが、その後のRCAへの復帰後にフィラデルフィア管と録音している演奏ともども、判で押したように、デビュー録音のころと同じに妙にオーケストラの各パートが等価に響く演奏だ。・・・」
率直なところ、竹内氏はOrmandyのことには関心・興味が殆ど無い(あるいは殆ど知らない)方だと思います。1936年の philadelphia orchestra の共同指揮者に就任したばかりの古いSP録音や1967年のロンドン響との録音(オーケストラがストライキしていた時の録音)等、Ormandyの大量の録音のなかでもかなり特殊な部類の録音を引っ張り出して論評するということ自体がそれを示しています。
「・・・だれにでも多少はある特定の音への偏愛、こだわりがオーマンディにはないのは、なぜだろうか?・・・」
Ormandyのサウンドは常に弦楽器を主体としており、上記の評論は完全に的外れなものです。BMG/RCAのProducer,Jay David Saks氏は下記の通り語っています。(日BMGジャパン BVCC-38060 のブックレットより引用)
「彼の作り出すサウンドは独特で、いつも弦が中心で、木管や金管は必要なときに重要なパートが聞こえてくればいい、というものでした。たとえば、彼はホルンを嫌っていました。いつも小さく、小さく演奏させるようにしていました。『セルがよく「トロンボーンは見えればいい。聞こえなくてもいいのだ」と言っていた。私はホルンについても同じだと思う。』と良くいっていました。オーマンディ・サウンド、それはなんと言っても、途方もなく大きな、美しい弦の音なのです。」
「・・・《新世界交響曲》は・・・判で押したように、デビュー録音のころと同じに妙にオーケストラの各パートが等価に響く演奏だ。・・・」
???理解不能です。??? 各パートが等価に響く??? 1967年のロンドン響はかなり特殊な事情での録音であり、これでOrmandyという指揮者を論評するのは問題があると思いますが、この録音はかなりオンマイクでバランスもかなり操作されています。Balance Engineer により、スコアで埋もれそうな音をかなり作為的に持ち上げているのが分かります。弦の音が力強く(単に録音上のレベルでの話では無く)聞こえるのは、オーマンディのボウイング指示による所が大きいでしょう。もう一方のRCAの録音はかなり自然なバランスが保たれていますが、一聴して分かるのは管の音をぐっと押さえ込んで弦の厚みをより前面に押し出していることです。他の演奏と聴き比べれば一聴瞭然です。「各パートが等価に響く」などとは、演奏をろくに聴いていない証拠です。
1978.6.7の吉田秀和氏の ormandy/philadelphia 来日演奏会の評で、
「・・・ブラームス『ハイドン変奏曲』では、あまりにすべての声部が平等に良く鳴りすぎ、とかく焦点のはっきりしない音楽になりがちだった(1978年6月1日・神奈川県民ホール)」
- 音楽 展望と批評3 吉田秀和(朝日文庫)
というのを読んだことがありますが、竹内氏は初めにこの結論ありきで紹介記事を書かれたのではないでしょうか?この記事を読んで「オーマンディ」を聴きたい、と思う方は余程の物好きでしょう。(2001.9.15)
-------------再掲ここまで-------------
そう、10年以上前、こんなこと書いていたんですなあ・・・
「クラシック幻盤 偏執譜」のオーマンディの項(p.156)に、この洋泉社の本の記事に関して、
「オーマンディ問題」 -ことの発端についての覚書
「ユージン・オーマンディ」のファンの方が、前記(注:洋泉社の本の記事の再録)の「オーマンディ論」に立腹なさっていました。少々誤解もなさっているようなので一言。・・・
とあり、驚いてしまった。ほぼ間違い無く、こりゃあ私のことだなあ・・・と。氏の言われる私の「誤解」については、「クラシック幻盤 偏執譜」を読んで頂くか、氏の下記ブログ記事を読んで頂くのが良いだろう。
・竹内貴久雄の音楽室
氏の言われる私の「誤解」については、氏の仰る通りであり、これは全く申し訳無い事で、この場を借りてお詫びします。但し、当時の記事の趣旨や私の意図は今も変わりませんが・・・
この件に関して、恐らく私と氏の主張は平行線のままで交わることはないでしょう。でも、それはそれで良いかと。一人の指揮者の遺した演奏を聴いて、インタビュー記事を読んで、此程までに異なる考え方・見方、そして結論?がある・・・実に愉快ではありませんか。
この「オーマンディ問題」について興味のある方は、1968年初来日時の評論や、舟山隆氏「鏡の中の音像 - オーマンディ=フィラデルフィア管弦楽団」(1978年来日時のパンフレットに掲載)を読まれると良いでしょう。あとは吉田秀和氏の評論ですかね。
ちなみに、現在、私自身はこの「オーマンディ問題」に殆ど感心がありません。「クラシック幻盤 偏執譜」を読んで思い出したくらいです。既に、オーマンディ&フィラデルフィアの主要な録音は殆どCDなりオンラインで聴ける状況であり、「聴いて判断して下さい」というのが私の率直な想いです。
あと、付け加えるならば、「貴方の耳と感性は貴方のものであり、音楽評論家のそれにとって変えることは出来ないものですよ」・・・というところですか・・・ね。
最後に、「クラシック幻盤 偏執譜」はなかなか面白いですよ。「クラシック・スナイパー」(1~8まで 青弓社より)の氏の記事も興味深く読みました。ご参考まで。
では。
レコード芸術2013年6月号 特集「黄金のアメリカン・サウンド」を読んで・・・ ― 2013年09月12日 05時00分
レコード芸術2013年6月号
特集「黄金のアメリカン・サウンド」
1950~1960年代のBIG5と巨匠指揮者たち
見開き2ページの「巻頭言」の内、1/2ページだが、セオドア・リビーJr.氏による「レコード時代の幕開け-RCAとコロンビアの熾烈な録音競争」、そして 同じくセオドア・リビーJr.氏による「ユージン・オーマンディ(フィラデルフィア管弦楽団)」と相場ひろ氏「レオポルド・ストコフスキー」の記事は興味深いものでした。
オーマンディ&フィラデルフィアの名録音を生み出した会場 フィラデルフィアのTown Hallについて(2012年1月7日)にも書きましたが、レコ芸で現在も連載中の 「欧米批評家によるレポート」アメリカ編 (Theodore W. Libbey Jr.氏)の中で、2011年6月号~2012年2月号の記事「高音質CDリイシュー盤の音質」①~⑨(10月号~1月号迄の⑤~⑧はオーマンディとフィラデルフィア管弦楽団に関する興味深い話)は、氏がリアルタイムに経験されたオーマンディ&フィラデルフィア管弦楽団の演奏と、彼らのレコーディング事情について、当時のアメリカ音楽事情と絡めて考察された実に具体性のある記事に引きつけられました。レコ芸6月号特集記事も同じく興味深い話に満ちてます。興味のある方は是非お読み下さいな。
そして、相場ひろ氏による「レオポルド・ストコフスキー -黄金時代の音楽シーンに重要な足跡を残す」で紹介されていた音源を知ってこれまた驚き。ストコフスキーのフィラデルフィア管弦団復帰演奏会のアルバムが2枚紹介されているではないか・・・こんな音源が出ていたとは、己の不明を恥じるばかりであるが・・・
以前このブログにも書いた、Pristine Classical (ブログ記事:その1、その2)から、現在なんと3アルバム相当がリリースされている。(ご参考:Pristine Classical の オーマンディ ・ ストコフスキー ・ フィラデルフィア管弦楽団 アルバム)
STOKOWSKI in Philadelphia, 16 March 1962 - PASC372
SIBELIUS Symphony No. 4 in A minor, Op. 63
DEBUSSY (arr. Stokowski) La Soirée dans Grenade
MUSSORGSKY (arr. Stokowski) Pictures at an Exhibition
Stereo 16-bit FLAC +€9.00
Stereo 24-bit 96kHz FLAC +€15.00
Stereo MP3 +€7.00
STOKOWSKI in Philadelphia, 17 December 1962 - PASC379
BEETHOVEN Symphony No. 5 in C minor, Op. 67
RAVEL (arr. Ravel) Alborada del Gracioso (from Miroirs)
STRAVINSKY Petrushka Suite
<ENCORES>
CLARKE (arr. Stokowski) Trumpet Prelude (Prince of Denmark's March) [notes/score]
GOULD Guaracha
RACHMANINOV (arr. Stokowski) Prelude in C sharp minor
HAYDN Symphony No. 45 in F sharp minor, "Farewell": Finale from 4th mvt
<BONUS TRACK>
REVUELTAS Sensemaya
Stereo 16-bit FLAC +€9.00
Stereo 24-bit 96kHz FLAC +€15.00
Stereo MP3 +€7.00
Stokowski's Return to Philadelphia, 1960 - PASC264
DE FALLA El Amor Brujo
Shirley Verrett-Carter, mezzo-soprano
RESPIGHI The Pines of Rome
SHOSTAKOVICH Symphony No. 5 in C minor, Op. 47
24-bit stereo FLAC +€30.00
Stereo FLAC +€18.00
Stereo MP3 +€14.00
いずれも鮮明なステレオ録音(ストコフスキ所有の「放送録音テープのコピーテープ」とのこと)で、Academy of Musicのデッドな音響の特徴が良く出ている。(一部、残響が少々多い録音もあり、マイク・セッティングが異なるのか、エコー付加したのか・・・もっと良く聴きこんだらまたここで書きます)
私は、「Stereo 16-bit FLAC」でダウンロード購入しました。ただ、回線が1MBpsのADSLなので、ダウンロードに1アルバムで2~3時間かかりましたが・・・ハイレゾ音源にも興味はありましたが、自宅のオーディオ環境ではハイレゾ音源の真価は発揮出来ないので、CD音質の音源にしました。ハイレゾ音源だとさらにダウンロードに時間がかかりそうでしたし・・・まあ、光回線ならそう時間もかからないでしょうが・・・
そして、相場ひろ氏から、同じく復帰演奏会の下記ライブCDが今年7月にリリースされていることも教えて頂きました。こちらの音源はEnno Riekena(The Leopold Stokowski Site)氏によるもの。
Stokowski - Brahms, Wagner 1960
Guild GHCD 2402
Wagner:Symphonic Synthesis from ‘Tristan und Isolde’ - Love Music from Acts II and III (arr. Leopold Stokowski)
Academy of Music, 23 Feburuary 1960
かつて、「フィラデルフィア管弦楽団という天下の銘器は、ストコフスキーによってつくられ、オーマンディによってかき鳴らされる」と言われたらしいが、このアルバムでは「ストコフスキーからオーマンディにバトンタッチされ維持されてきたフィラデルフィア管弦楽団をストコフスキーがかき鳴らす」のを鮮明なステレオ録音で楽しむ事の出来る歴史的且つ面白いアルバムと言える。ファン必携の音源だろう。
んでは。
情報解禁だと・・・タワーレコード "Sony Classical" スペシャル・セレクション第7弾 第III期(10タイトル) ― 2013年09月14日 05時30分
ガブリエーリの饗宴
SICC-1704
「・・・セル時代のクリーヴランド管、オーマンディ時代のフィラデルフィア管、そしてマルティノン時代のシカゴ響の有名金管奏者達が1968年に録音したこの盤は、現在においてもアメリカ黄金時代の響きが堪能できる名作として輝きを放っています。今年2013年に他界したA.ハーセスを偲ぶ盤として、この名作と1977年にレヴァイン指揮で実現した「ブランデルブルク協奏曲第2番」をカップリング。全盛期のハーセスの輝きを捉えた追悼盤として発売いたします。・・・」
このアルバムについては説明不要でしょう。1000円国内盤やマスター・ワークス・ヘリテージ盤で既に復刻されていますし・・・
CBS/SONY オーマンディ「音」の饗宴1300 ブラームス交響曲第4番 ― 2013年09月14日 07時30分
Brahms Symphony No.4
recorded on 25 october 1967 in the town hall, philadelphia
そう、「オーマンディ&フィラデルフィアの、このブラームスの4番交響曲を1枚のLpで聴きたい・・・」と長い間思っていたのだが、このLpがなかなか見つからなかったのだ・・・まあ、そう積極的に探していた訳でも無く、中古Lp屋さんの交響曲やブラームスのコーナー・棚を「無いかな~」と覗いていたくらいだが・・・
Lpでは3枚組交響曲全集 Columbia Masterworks D3M31636 があるし、2010年に 交響曲全集としてCD化(SONY CLASSICAL/SICC-1421 3CDs)もされているのに、何故?・・・と問われても困るのだが・・・
3枚組の D3M31636 、Lp片面の3番(3・4楽章)の後に1楽章がカッティングされており、残りの2~4楽章を片面に詰め込みカッティング・・・残念ながら音質は今ひとつ。それもCD化で改善されたワケだが、やはり、1枚のLpで聴きたいのよね~
オーマンディ&フィラデルフィアの1966年~1968年に録音されたブラームスの4つのシンフォニーのLpは、3枚組の D3M31636 か、CBS/SONY 「オーマンディ 音の饗宴1300」 の1番(Vol.18 SOCT 18)と4番(Vol.19 SOCT 19)しかないのだ・・・
1番は昔から実家で良く聴いていたし、中古レコード屋さんでも数回見た・・・人気曲だしよく売れたのだろう・・・しかし、この4番のLpはなかなか目にすることはなかった・・・貴重盤でもレア盤でもなんでもないのだが、何故かなかなか・・・熱心に探していたわけではないが、10年以上ずっと「無いかな~」と折に触れて探索?していたにも関わらず・・・まあ、たぶんそう多くの枚数がプレスされたわけでもなく、それ程売れもしなかったと思われるのだが・・・
・・・ひと月程前、大須のハイファイ堂レコード店でCBS/SONY 「オーマンディ 音の饗宴1300」 のキャップ付きLpが目に止まった。棚の上から見ても目立つ(というかそれを目的としたキャップだが)
↓キャップ・・・それとも帯?
状態も良好で、3枚組詰め込みカッティングの D3M31636 よりも音に余裕がある。また一枚愛聴盤が増えましたな・・・では。
ストコフスキー フィラデルフィア管弦楽団復帰演奏会ライブ 1960年2月23日 ― 2013年09月20日 04時00分
Wagner:Symphonic Synthesis from ‘Tristan und Isolde’
- Love Music from Acts II and III (arr. Leopold Stokowski)
Leopold Stokowski/The Philadelphia Orchestra
Academy of Music, Philadelphia, 23 Feburuary 1960
このCD、(株)東京エムプラス扱いで日本語の帯が付いている。CDの音源は、Enno Riekena(The Leopold Stokowski Site)氏によるもの。恐らく、フィラデルフィアのラジオ局WFLNの放送録音テープのコピーか、或いはその放送のエアチェックか・・・
・・・フィラデルフィアのラジオ局WFLNは、1949年にクラシック音楽専門FM局(95.7MHz)として開局し、1956年に同じプログラムを流すAM局(900kHz)も始めている。1985(1988年?)年に売却されてWDVTと変わり、1995年~1997年は少なくとも5回以上売却が繰り返されて、放送内容もよりコマーシャル向き(クラシック音楽は減っていったと思われる)に変わっていった。
そして1997年に現在のオーナーに売却され、クラシック音楽のアーカイヴはWRTIに売却され現在はWBEN-FM となっている。(以上、Wikipedia WFLN、WDVT、WBEN-FM、WRTI の記載より引用)
ファンとしては、WRTIに売却されたクラシック音楽のアーカイヴ・テープが気になるところである。恐らく、フィラデルフィア管弦楽団の放送録音がここにあるはずなので、ちゃんとデジタル化して後世にその遺産を継承して欲しいものだが・・・
オーマンディ/フィラデルフィアのすべて (日本コロムビア 1967年3月) の「ラジオとテレビのフィラデルフィア管弦楽団」-「フィラデルフィア管弦楽団の放送サービス」によると・・・
「1960年~1961年のシーズンに、フィラデルフィア管弦楽団協会は、放送サービス事業を開始し大成功を収めている。Academy of Music での実際のコンサートが現場録音され、フィラデルフィア管弦楽団の副指揮者 William Smith の解説と紹介を付けて、番組は完成される。
このテープは予約した全米の各放送局に売り出され、それぞれ地方のコマーシャル・スポンサーによって毎週放送される。こうして新しいシーズン毎にフィラデルフィア管弦楽団と一流の客演ソロイストによる二時間のコンサートシリーズ番組が手今日される。・・・」
・・・とある。これらの放送テープはフィラデルフィア管弦楽団協会(POA)かWRTIのマスターとそのコピーが全米各地の放送局に存在すると思われるが・・・これらの貴重な演奏が何らかの形で聴けることを願う。
同著によると、オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団はアメリカで最初にテレビに出演した一流交響楽団であり、その放送は1948年3月20日、CBSの一時間半の番組だったそうな。その様子は、Penn Libraries の Coming to the Small Screen: Ormandy on Television にて確認出来る。(Eugene Ormandy - A Centennial Celebration- もご参考に)
閑話休題
かつて、「フィラデルフィア管弦楽団という天下の銘器は、ストコフスキーによってつくられ、オーマンディによってかき鳴らされる」と言われたらしいが、このCDでは「オーマンディ時代のフィラデルフィア管弦楽団をストコフスキーがかき鳴らす」のを明瞭なステレオ録音で聴くことが出来る。当時の指揮者は自分の音をオーケストラに(良い意味で)「押しつける」事が出来る実例であろう・・・明らかにオーマンディとは異なるストコフスキーの音がここにある。
一つ残念なのは、過度のノイズ除去により音の生気が減退していること。願わくば、もう一度マスタリングをやり直してリリースして欲しいものだが・・・音のレストレーションの難しさを痛感する次第。
ネゼ=セガン&フィラデルフィア管弦楽団/ストラヴィンスキー&ストコフスキー ― 2013年09月20日 05時50分
『ネゼ=セガン/ストラヴィンスキー&ストコフスキー』
ストラヴィンスキー「春の祭典」(1947年版)
ストラヴィンスキー(ストコフスキー編):パストラーレ
J.S.バッハ(ストコフスキー編曲)
トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582
小フーガ ト短調 BWV578
2013年3月 フィラデルフィア キンメル・センター、ヴェリゾン・ホール
数多の名録音・名演奏がひしめく「春の祭典」をアルバムのアタマに持ってきた・・・それは「ストラヴィンスキー&ストコフスキー」のタイトルが示すとおり、今後のネゼ=セガンとフィラデルフィア管弦楽団の行方を占う一つのヒントになるだろう。
それはさておき・・・
久々に、手元のB&H1967年版を片手に「春の祭典」を聴いたが、難曲の時代は過ぎて本当に「古典」になってしまったなあ・・・と実感。数多の名録音・名演奏がひしめく「春の祭典」で一頭地を抜く・・・を期待する時代ではないが、これはなかなかの名演だ。出来れば1947年版スコアを片手に聴きたいところだが、ネゼ=セガンとDGプロデューサーの狙いが何なのかを考えながら聴くのは実に楽しい。
ストコフスキー編曲のバッハ・・・フィラデルフィアの新録音はサヴァリッシュのEMI盤以来だが、これも素直にフィラデルフィア・サウンドを楽しめる。弦を主体としたオーケストラ・サウンド・・・ストコフスキーが形作りオーマンディが維持し磨き上げたフィラデルフィアのサウンド・コンセプトをDGプロデューサーとネゼ=セガンはちゃんと理解してそれを押し出しているようだ・・・
パストラーレを最後に持ってくる配慮・・・一つのアルバムとして完結するプログラミングもなかなかのもの。これがフィラデルフィアとのファースト・リリースであるという意気込みを感じるではないか・・・今後の展開に期待したい。
ムーティ&フィラデルフィア - フランクのシンフォニーと交響詩 ― 2013年09月21日 07時20分
EMI Classics クラシック名盤999 TOCE-16362 (2013.5.29)
Franck : Symphony in D minor, Symphonic Poem"Le chasseur maudit"
Riccardo Muti/The Philadelphia Orchestra
Recorded: 26, October 1981, The old Met, Philadelphia
クラシック大レーベルのEMI・DGG・DECCA・PHILIPS(あ、DECCAに統合されたか・・・)が仲良くUniversal Musicに統合されるとは・・・時代は変わりますなあ・・・米Columbia Masterworks と RCA Red Seal も今では仲良くSony Classicalだし・・・
このジャケットデザイン、オリジナル盤のものではなく、確かEMI100周年記念として企画された Red Line シリーズのものだったと思う。EMI国際リリースの盤はそれなりに練られた意欲的な企画盤であったが、日本国内リリースではそのあたりのコンセプトがごっそり抜け落ちた、単なる廉価盤になってしまっていたような・・・
こうして、クラシック名盤999として再登場して、ますます意味不明のジャケット・デザインになってしまったが、国内の担当者がそういう歴史を知らず、オリジナル・ジャケットを探す手間も気力も無ければ仕方が無い・・・が、この音源が廉価盤として入手出来たのは有難いことではある。
閑話休題
はっきりいって、フランクのこのシンフォニーは苦手である。作曲者の名前とは裏腹の重苦しさがどうも・・・でも、この演奏を聴いて、少しは食わず嫌いを改める気にはなった・・・音楽監督就任間もない貴重な録音となってしまったが・・・では。
Stokowski's Return to Philadelphia, 1960 - Pristine Classical PASC264 ― 2013年09月25日 06時30分
Stokowski's Return to Philadelphia, 1960 - PASC264
MOZART Marriage of Figaro - Overture
DE FALLA El Amor Brujo
Shirley Verrett-Carter, mezzo-soprano
RESPIGHI The Pines of Rome
SHOSTAKOVICH Symphony No. 5 in C minor, Op. 47
Leopold Stokowski/The Philadelphia Orchestra
24-bit stereo FLAC +€30.00
Stereo FLAC +€18.00
Stereo MP3 +€14.00
ストコフスキーは1934年、フィラデルフィア管弦楽団の常任指揮者を辞めると(突如)宣言、理事会は辞められては困ると説得してストコフスキーを「音楽監督」に祭り上げたそうな・・・これはオーケストラの「独裁権」はあるが最高の「拒否権」はないそうで・・・、これで一旦解消した辞任問題、再び火が付いたのが1936年、ストコフスキーは再度辞任を申し出て、これは目出度く受理?されたそうな・・・
それから暫く客演指揮者としてフィラデルフィア管弦楽団を毎シーズン指揮していたが、1941年からは完全に縁が切れたそうな・・・(オーマンディ/フィラデルフィアのすべて (日本コロムビア 1967年3月) の「ストコフスキーとオーマンディとフィラデルフィア管弦楽団」デイヴィッド=ユーエン より)
そう言えば、オーマンディはフィラデルフィア管弦楽団のMusic Director and Conductor(音楽監督 兼 常任指揮者)であり、正に実権を握ったボスだったわけだが・・・
1970年代始め、オーマンディはフィラデルフィア管弦楽団を1シーズン100回くらい指揮してしたそうな・・・それ以前は185回も指揮していたそうである。(ロバート=チェスターマン編著・中尾正史訳「マエストロたちとの会話」 洋泉社 1995年10月 より)
閑話休題
1941年以来絶縁状態であったストコフスキーがフィラデルフィア管弦楽団に客演指揮者として復帰したのが1960年、正に歴史的な復帰(Historical Return)演奏会ライブの1枚がこのアルバム。
Wikipediaによると、1969年まで何回かフィラデルフィア管弦楽団を指揮したそうな・・・恐らく、その貴重な演奏は全てテープに録音されているハズ・・・WRTI か フィラデルフィア管弦楽団 の倉庫からの蔵出しを期待したい・・・
このアルバムは、ストコフスキー所有「放送録音テープのコピーテープ」とのことで、実に鮮明なステレオ録音であり、Academy of Musicのデッドな音響の特徴が良く出ている。
コンサート後のストコフスキーのスピーチは会場の鮮明なステレオ録音と共に楽しめるおまけ付きである。50年以上前の歴史的な演奏会がこんな鮮明な音で聴けるとは驚きである。
リマスタリングも実に旨くいっており、多少テープヒスを残しつつ、過度なノイズ除去を控えて、鮮明な音を蘇らせている。多少音が荒れっぽいが、これは年代を考えれば仕方が無いと思うし、実に生々しい音が楽しめる。一部、テープ損傷と思われる音の崩れ(レスピーギの3曲目)が数秒あるが、鑑賞に支障は無い。
放送局の解説より、フィラデルフィア管弦楽団の定期演奏会ライブであることは解るが、具体的な日時は不明。まあ、フィラデルフィア管弦楽団の演奏会記録を調べれば解るはずだが・・・
続編?を期待したい。んでは。
STOKOWSKI in Philadelphia, 1962年3月16日 - Pristine Classical PASC372 ― 2013年09月27日 06時00分
WEBERN Passacaglia, Op. 1
SIBELIUS Symphony No. 4 in A minor, Op. 63
DEBUSSY (arr. Stokowski) La Soirée dans Grenade from Estampes
MUSSORGSKY (arr. Stokowski) Pictures at an Exhibition
Leopold Stokowski/The Philadelphia Orchestra
Transfers from tapes compiled for Leopold Stokowski from the collection of Edward Johnson
Recorded at the Academy of Music, Philadelphia, 16 March 1962, for broadcast by WFLN-FM
Broadcast producer and announcer: Wiliam Smith
Broadcast sound engineer: Fred Chassey
Stereo 16-bit FLAC +€9.00
Stereo 24-bit 96kHz FLAC +€15.00
Stereo MP3 +€7.00
前回書いた、Stokowski's Return to Philadelphia, 1960 - Pristine Classical PASC264 よりも更に音のふくよかさ、特に低音が増しているし、エコーも多めだ。マイク・セッティングが異なるのか、エコー用のマイクを増設したのか、或いは収録後にエコーを付加したのか・・・
それはさておき、ストコフスキーが所有していた「放送録音を編集したコピーテープ」が音源とのことで、これまた実に鮮明なステレオ録音であり、多少のエコー付加があるとはいえ、Academy of Musicのデッドな音響の特徴が良く出ている。
ストコフスキー編曲「展覧会の絵」を、ストコフスキーがAcademy of Musicでフィラデルフィア管弦楽団を指揮した明瞭なステレオ録音・・・これが貴重な歴史的な遺産でなくて何であろうか・・・全く、こんな超弩級の録音が出てくるとは夢のような話である。もっともっと、こういう埋もれている財宝を掘り起こしてもらわねば・・・
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