Joseph Jongen - Symphonie Concertante その5 - A Grand Celebration - The Philadelphia Orchestra live with The Wanamaker Organ at Macy’s Center City , September 27, 2008.2010年10月16日 11時50分

こんな音源がNMLにあったとは・・・知らなかったなあ・・・守口フィラデルフィア管弦楽団研究会のレビューを読まなければ危うく見逃すところであった・・・

Joseph Jongen協奏交響曲 ・・・一度実演に接してみたいと思いつつ未だに果たせない曲なのだが・・・ こんな嬉しいディスクが出ているとは・・・

Gothec G-49270-2
Recorded live, September 27, 2008

このアルバムは今年の2月9日にGothic からリリースされている。

Gothicというレーベル、NMLによると

「レパートリーはオルガン作品と合唱作品を中心にしており、アメリカの合唱団による演奏会プログラムの録音を主にリリースしている。」

だそうな・・・

それにしても、フィラデルフィア管弦楽団によるジョンゲンの「協奏交響曲」のアルバムが出ているとはねえ・・・しかも、その演奏会場とオルガンが・・・1920年代に果たせなかった約束がその80年も後になって実現していたとは・・・。MACY's150th Anniversary という契機に実現出来たのだろう。

ジョンゲンの「協奏交響曲」作曲に関するエピソードは Cypres CYP7610(このCDは Joseph Jongen - Symphonie Concertante その1 でとりあげた )の日本語解説に詳しいので興味のある方はそちらを読んで頂くのが良いだろう。

その解説によると、ジョンゲンの「協奏交響曲」は、当時アメリカの商業界に君臨していた Rodman Wanamaker が作曲の依頼をしてきたのがきっかけだそうな。ワナメイカーは自らが経営する百貨店 に設営されていたパイプオルガンを改修する際、その改修後の記念演奏会の為に ジョンゲン に新作を依頼したのだ。ジョンゲン 自身も自ら初演の独奏者を買って出るつもりで、1926年の夏を費やして作曲を進めたが、父親の死、そして 当の依頼者である ワナメーカー自身が 1928年に亡くなり、結局このジョンゲン の「協奏交響曲」による記念演奏会はなんと2008年に実現することになった。下記、Gothic G-49270  の説明から引用すると・・・

After a wait of over eighty years, the vast tonal palette of The Philadelphia Orchestra is joined, once more, with the world’s greatest symphonic pipe organ for this historic concert! Recorded live, September 27, 2008. Includes Joseph Jongen's Symphonie concertante, which was commissioned for the Wanamaker organ and the Philadelphia Orchestra in the 1920's, but never performed together until this "Grand Celebration"

なかなか興味深い話である。結局、「協奏交響曲」は1928年にブリュッセルにて初演、アメリカ初演は 1935年カーネギー・ホールで実現した・・・そうな。

ちなみに、このアルバムでも演奏されているこの Wanamaker organ は、1904年のセントルイス万博 に際して建造されたもので、当時世界最大のオルガンとして名を轟かせたそうな。万博終了後、ワナメーカーが買い取って1911年に百貨店に据え付けた。Wikipedia によると、

Wanamaker's sponsored many historic after-business-hours concerts on the Wanamaker organ. The first, in 1919, featured Leopold Stokowski and the Philadelphia Orchestra with organist Charles M. Courboin.Every sales counter and fixture was removed for the free after-hours event, which attracted an audience of 15,000 from across the United States..

ということで、レオポルド=ストコフスキ、そして フィラデルフィア管弦楽団もこのWanamaker organ とは浅からぬ縁があるようだ。このコンサートについてもWikipedia に記述がありそれによると、

The Philadelphia Orchestra returned to the Grand Court on September 27, 2008 for the premiere performance of Joseph Jongen's Symphonie Concertante (1926) on the organ for which it was written. The ticketed event, featuring soloist Peter Richard Conte, also includes the Bach/ Stokowski arrangement of the Toccata and Fugue in D Minor, Marcel Dupré's Cortege and Litany for Organ and Orchestra, and the world premiere of a Fanfare by Howard Shore, composer for the Lord of the Rings films. Shore visited the store in May 2008 to meet with Peter Richard Conte and hear the Wanamaker Organ. The Philadelphia Orchestra Concert was co-sponsored by the Friends of the Wanamaker Organ and was a benefit for that organization.

だそうで、このアルバムに収録されていない曲も数曲あったようだ。(Bach/ Stokowski arrangement of the Toccata and Fugue in D Minor とか)

このアルバムの主役は Wanamaker organ であり、エルガー威風堂々もしっかりとオルガンが花を添えている。

それにしても、何故 マルセル=デュプレの "Cortege and Litany"(のオーケストラ&オルガン編曲版)が入っているかと思ったら・・・またまたWikipedia からの引用になるが・・・

Subsequently more of these "Musicians' Assemblies" were held, as were private recitals. For these events Wanamaker's opened a Concert Bureau under Alexander Russell and brought to America master organists Marcel Dupré and Louis Vierne, Nadia Boulanger, Marco Enrico Bossi, Alfred Hollins, and several others. (This agency, which worked in partnership with Canadian Bernard R. LaBerge, evolved into the Karen McFarlane Concert Agency of the present day.) During his first recital on the organ, Dupré was so impressed with the instrument that he was inspired to improvise a musical depiction of the life of Jesus Christ. This was later published as his Symphonie-Passion.
.
ということで、これまたこのオルガンに縁のある作曲家が選ばれていたんですな。これは嬉しい驚きである。

(後日)CDを取り寄せて聴いてみた。最近流行のデジパック仕様。

ブックレットの写真では、デパートの大広間らしき空間、オルガンの下にオーケストラが陣取っており、オーケストラの頭上、三本のマイクが天井から吊されたバーに固定されており、これが基本マイクなのだろう。その他、各パートの音をキャッチする補助マイクがオーケストラ舞台の各所に設置されているようだ。

音を反射しやすい硬い材質(石壁?大理石?モルタル壁?)で囲まれてはいるが、四方に通じているので音がこもることは無いようだ。

さて、録音について、一聴して、自然でなかなか良いサウンドと感じた。オルガンの低音の量感もたっぷり入っており、それはサブソニック領域まで伸びているようだ。ヘッドホンで聴くとペダル音のフォルテで耳を叩かれるような感じがする。デパートの大広間でしかも観客が入ったライブ録音という悪条件にもかかわらず、オーケストラとオルガ ンのバランスもいい。補助マイクの音のミキシングもうまくいっているようで、耳障りでないのに細かい音も聴き取れる。

演奏もなかなかいい。正攻法そのものという感じだ。協奏交響曲 の4楽章はオルガンの入りのタイミングや、ラストのオケとオルガンの合わせの若干の不一致が気になったが、まあ一発ライブ録音だからそれは仕方ないだろう。ライブ録音にしてはミスが少ないと思うし、もともとオルガンとオケは合わせにくいから、全体としては精度の高い演奏といえる。

このアルバムの主役はオルガンなので、デュプレのオルガン曲、そしてエルガー威風堂々(オーケストラ曲)のどちらもオルガン+オケの編曲版で演奏している。

それにしても、これは歴史的なドキュメントであり、またジョンゲン協奏交響曲」のライブ録音でもある。この曲のセッション録音は現在かなりの数が出ているが、ライブ録音といえば・・・Joseph Primavera/Philadelphia Youth Orchestra によるCD(米Direct-To-Tape Recording Company DTR8804CD (P)(C)1989)くらいか・・・。これもフィラデルフィアと関係が深い音源である。

話変わって・・・このWanamaker organ と歴史的なコンサートについてネットで探していると・・・色々ありますな。

「おかか1968」ダイアリー~いっそブルレスケ~
2008.09.23 フィラデルフィア管 世界最大のオルガンと競演


甲斐田雅子のニューヨークリポート
2008年7月21日 世界一大きなパイプオルガン


The One Ring.net
Shore Helps Macy’s Celebrate 150th Anniversary
August 5th, 2008 by xoanon Comments Off


Youtube
Virgil Fox Legacy | Interview | Wanamaker | Heavy Organ


ジョンゲンの「協奏交響曲」をオケで演奏された方のブログもありました。羨ましい~

Hautbois藤本尚子のフランス日記
オルガンと管弦楽のための協奏交響曲


ま、こんなところで。(2010年10月23日 加筆修正)

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