Ormandy & Philadelphia による メンデルスゾーン 2台のピアノの為の協奏曲 その1 ― 2008年11月29日 09時43分
メンデスゾーン生誕200年記念ということで・・・
フェリックス=メンデルスゾーン(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3
バロック・マスターワークス(http://06.teacup.com/qwh01700/bbs/486)の時もそうですが、こういう全集の中にさりげなくマエストロの音源がCD化されている・・・ということがありますね。
RCA,ARTE NOVA,Vivarte,SONY音源を集大成した30枚BOXセットが出るそうですが、ここにも(恐らく)初CD化の音源が・・・30枚組で6千円を切る値段というのは・・・CDも安くなったもんですねえ。
Mendelssohn The Complete Masterpieces
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2872242
マエストロの演奏はその中の2枚。
Disc 8:
・ヴァイオリン協奏曲ホ短調 Op.64
アイザック・スターン(ヴァイオリン)
フィラデルフィア管弦楽団
ユージン・オーマンディ(指揮)
録音:1958年3月、フィラデルフィア
・ヴァイオリン協奏曲ニ短調
竹澤恭子(ヴァイオリン)
バンベルク交響楽団
クラウス・ペーター・フロール(指揮)
録音:1994年1月、バンベルク(デジタル録音)
Disc 9:
・2台のピアノのための協奏曲ホ長調
・2台のピアノのための協奏曲変イ長調
アーサー・ゴールド(ピアノ)
ロバート・フィッツデーレ(ピアノ)
フィラデルフィア管弦楽団
ユージン・オーマンディ(指揮)
録音:1963年1月、フィラデルフィア
ヴァイオリン協奏曲は何回もCD・SACD化されていますが、2つの2台のピアノのための協奏曲(米Columbia MS-6681,ML-6081)は初CD化ではないでしょうか?
30枚組・・・というのは躊躇しますが(置き場所が・・・)、値段を考えるとお買い得かも。オーマンディ・ファンには「2つの2台のピアノのための協奏曲」が目玉?でしょうが、名前は知っているけど、普段あまり聴くことのないメンデルスゾーン作品(有名なヴァイオリン協奏曲以外の)を聴く・・・といういい機会かもしれませんね。
では。
Ormandy & Philadelphia による メンデルスゾーン 2台のピアノの為の協奏曲 その2 ― 2008年11月29日 17時11分
Ormandy & Philadelphia による メンデルスゾーンの「2台のピアノの為の協奏曲」2曲がCD化されるということで、元のLPを引っ張り出して聴いてみました。
米Columbia Masterworks MS-6681(LP, 2eyes)
Mendelssohn
The Two Concertos for Two Piano & Orchestra
Arthur Gold & Robert Fizdale(pianos)
Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
レコード解説によると、ホ長調の協奏曲は14歳の時、変イ長調の協奏曲は15歳で作曲しているそうな。とてもそうは聴こえませんな・・・正に「早熟の天才」だったんでしょうな。
このLPのSide1にホ長調の協奏曲(28分35秒)が、Side2に変イ長調の協奏曲(30分52秒)が、それぞれカッティングされている。LPの限界に近い収録時間であり、詰め込み録音(ダイナミックレンジを狭めて長時間の音楽を詰め込む)になっているのは致し方無いところだろう。こういうソースこそ、CD化の恩恵を得ることが出来る。
とはいえ、このLPの音はなかなかのものだ。ダイナミックレンジを欲張らず、程よいバランスで音を纏めている。
この協奏曲でピアノ演奏しているアーサー=ゴールドとロバート・フィッツデーレは結構有名なデュオだったらしい。John Cage や Francis Poulenc も彼らのために曲を書いているくらいだし。
Gold and Fizdale
http://en.wikipedia.org/wiki/Arthur_Gold
それにしても、メンデルスゾーンの音楽を聴いていると、幸福感というか優雅と言うか、そういうものを感じずにはおられませんな。裕福なユダヤ人(親父さんがキリスト教に改宗しているのにもかかわらず)として世間の攻撃にさらされたり、若くして亡くなっていることを除けば、幸福に彩られた人生を送った作曲家だったんでしょうな・・・
ちなみに、このフェリクス=メンデルスゾーンには科学者の息子パウルがいる。
Felix Mendelssohn
http://en.wikipedia.org/wiki/Felix_Mendelssohn
Paul Mendelssohn
http://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Mendelssohn_Bartholdy
このパウルが設立した会社が、映画フィルムで有名な AGFA だ。最近はデジカメの普及により化学フィルムの需要が落ち込み、AGFAも再編されたというニュースは記憶に新しい。
Agfa-Gevaert
http://en.wikipedia.org/wiki/Agfa-Gevaert
Agfa Photo
http://en.wikipedia.org/wiki/AgfaPhoto
ちなみにAGFAとは、Aktiengesellschaft für Anillinfaktoren の頭文字を採ったものでその意味は 「アニリン製造株式会社」という味も素っ気も無い会社名だ。海外のかっこいい名前の会社も正式名を日本語に直すと「な~んだ」という社名の会社が結構あったりして・・・
AGFAは1904年にドイツの化学会社と手を組む。BASFとBAYERの2社である。
BASF
http://en.wikipedia.org/wiki/BASF
BAYER
http://en.wikipedia.org/wiki/Bayer
BASFは、昔、LPレコードのレーベルやカセットテープブランドとして目にした記憶がある。なんかドイツのかっこいい会社だなあ・・・という感想程度だけど・・・BASFは、Badische Anilin- und Soda-Fabrik(バディッシュ・アニリン・ソーダ 製造)という、これまた「業務内容そのまんま」という会社名だ・・・が、歴史あるドイツの化学メーカーだ。戦時中のドイツが既に磁気テープレコーダーによる録音を行っていたのもBASFがテープベース(アセテートだったかな?)を開発したから出来たことだし。
BAYER も 日本に馴染み深い会社ではないだろうか。鎮痛剤のアスピリンもバイエル社の開発品だし・・・
この3社に、さらにHoechst社が加わり、あの悪名高い IG Farben(Interessen -Gemeinschaft Farbenindustrie AG : 染料利益共同体) が設立されたという歴史的な経緯がある。戦時中のドイツの強制収容所にもかかわっていた会社の一つでもある。
Hoechst
http://en.wikipedia.org/wiki/Hoechst_AG
IG Farben
http://en.wikipedia.org/wiki/IG_Farben
かくて、メンデルスゾーン家のパウルが設立したAGFAが後年、IG Farben という化け物になってヨーロッパに悲劇をもたらすとは、フェリックス親父さんが思い至る筈も無し。
一方、フリッツ=ハーバー (学校で、ハーバー・ボッシュ法なんて習いましたな)から始まったこれらドイツ有機工業化学の大化けぶりを、海賊国家大英帝国が放っておく筈も無く、こちらはその名も帝国化学工業(Imperial Chemical Industries‐ICI)を作って対抗することに・・・
Fritz Haber
http://en.wikipedia.org/wiki/Fritz_Haber
Carl Bosch
http://en.wikipedia.org/wiki/Carl_Bosch
ハーバー・ボッシュ法
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E6%B3%95
ICI
http://en.wikipedia.org/wiki/Imperial_Chemical_Industries
かくして、IG Farben と ICI という、ヨーロッパの2大化学トラストが血みどろの戦いを演じる、第2次世界大戦の土台が整った・・・という、学校では教えない歴史がある。
作家の広瀬隆氏が著書「赤い楯」で、この IG Farben 設立を実に意義深い言葉で簡潔に説明している。
「軍服をバイエルが染め上げ、BASFの火薬で戦争を行い、負傷者をヘキストの薬で治療すると言う勝利の記録を、AGFAカラーで残そうとしたのかも知れぬ」
田中芳樹氏の「七都市物語」に匹敵する文句だと思うが如何だろうか?
広瀬隆
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E7%80%AC%E9%9A%86
田中芳樹
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E8%8A%B3%E6%A8%B9
七都市物語
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%83%E9%83%BD%E5%B8%82%E7%89%A9%E8%AA%9E
「赤い楯」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%89%E5%AE%B6
双方が死力を尽くして戦争やった結果があの悲惨な犠牲者の山を生んだ・・・ブリテンの「戦争レクイエム」の背景の一部でもある。
Benjamin Britten
http://en.wikipedia.org/wiki/Benjamin_Britten
War Requiem
http://en.wikipedia.org/wiki/War_Requiem
ちなみに、ブリテンはデッカに戦争レクイエムの自作自演を遺しているが、デッカという会社はレコード部門だけではなく、レーダーや航法システムも作っていた。
Decca Records
http://en.wikipedia.org/wiki/Decca_Records
Decca Radar
http://en.wikipedia.org/wiki/Decca_Radar
Decca Navigator System
http://en.wikipedia.org/wiki/Decca_Navigator_System
ま、それを言うなら、もう一つのEMI(Electric & Musical Industries)も、ステレオレコードの開発(確か、45/45方式は EMI のAlan_Blumleinが発明し、結局 DECCA の V-L方式は復旧しなかったが、カートリッジにその名残は残っている)のほかにもミサイル航法システムとか軍需技術で食っていた訳だし・・・
EMI
http://en.wikipedia.org/wiki/EMI
Alan Blumlein
http://en.wikipedia.org/wiki/Alan_Blumlein
一方、ヨーロッパから離れたアメリカでは、これまた化学屋のデュポン が・・・というのはまた別の話。
DuPont
http://en.wikipedia.org/wiki/DuPont
ちなみに、戦後解体された IG Farben を構成していた会社は、これまで書いたとおり、現在も形を変え名前を変えて生き続けている。善し悪しはともかく、非常に興味深い「歴史」だと思う。
ちなみに、1999年、ヘキストはローヌ・プーランと合併してアベンティスとなったが、このローヌ・プーランと関係が深いクラシックの作曲といえば、フランシス=プーランクがいる。
Rhône-Poulenc
http://en.wikipedia.org/wiki/Rh%C3%B4ne-Poulenc
Francis Poulenc
http://en.wikipedia.org/wiki/Francis_Poulenc
Sanofi-Aventis
http://en.wikipedia.org/wiki/Sanofi-Aventis
・・・う~ん、なんでメンデルスゾーンからこういう話になってしまったのか・・このへんで止めとこ。
それにしても、LPで聴いて、音質がクリアになったCDで聴きたいという気分になってしまった。メンデルスゾーン30枚ボックス・・・どうしようかな・・・
では。
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