Ormandy/Philadelphia - Berlioz "Symphonie Fantastique", 1960年 ― 2011年01月10日 07時00分
Hector Berlioz : Symphony Fantastique
Charles Camille Saint-Saëns:
Symphony No. 3 in C minor ('Organ'), Op. 78
Danse macabre, symphonic poem in G minor, Op. 40
ベルリオーズの幻想交響曲、そしてサン=サーンスのオルガン交響曲と死の舞踏のカップリングによる2枚組のCD。52DCという番号が示すとおり、当時5200円の高価なCDである。とはいえ、この頃は1枚3200~3800円が相場(違ったかな?)の時代だったから、この当時としては割安な方かもしれないが・・・
このCDはマエストロ・ジーンとフィラデルフィア管弦楽団の演奏を2枚組CD 10セットに纏めて、1985年に発売されたものの一つ。図らずも同年死去したマエストロの追悼盤みたいな形になってしまったような・・・Bruno Walter/Columbia SO のCD化に刺激を受けて、このコンビの昔の録音をオリジナルの3チャンネルマスターテープから新たにリミックス・ダウンした・・・というのがウリの企画と思われる。全10組のラインナップは下記の通り。
52DC361/2 チャイコフスキー 3大バレエ
52DC363/4 幻想交響曲、サンサーンス オルガン、死の舞踏
52DC365/6 グランドキャニオン、ラプソディーインブルー、パリのアメリカ人
ポーギーとベス
52DC367/8 展覧会の絵、禿げ山の一夜、シェエラザード、スペイン奇想曲
52DC369/70 チャイコフスキー交響曲4,5,6
52DC371/2 ベートーヴェン交響曲3,5,6
52DC373/4 トッカータとフーガ、パッサカリアとフーガ、主よ・・、アイネ・クライネ、四季
52DC375/6 レ・シルフィード、シルヴィア、コッペリア、パリの喜び、三角帽子、
ファウストのバレエ(グノー)
52DC377/8 イタリア奇想曲、オネーギンのワルツ、1812年、ルスランとリュドミラ
フィンランディア、亡き王女の為のパヴァーヌ、ラヴァルス、ボレロ、
狂詩曲スペイン(シャブリエ)、ローエングリン3幕への前奏曲
マイスタージンガー前奏曲
ハーリーヤーノシュ~戦争とナポレオンの敗北
52DC379/80 マーチ集
ブックレットの解説について少々・・・
まず、志鳥栄八郎氏による「オーマンディと天下の銘記フィラデルフィア管弦楽団」で1ページ。これはCBS/SONY 「オーマンディ 音の饗宴1300」全50巻の解説と全く同じものである。
お次は、和田則彦氏による「CDで聴く華麗なるフィラデルフィア・サウンド」も1ページ。こちらは、当時新しいメディアであるCDに懐疑的な「スーパー・アナログ党」に対する、「CDへのお誘い」である。ちょっと引用しますが、
「・・・このシリーズに使われているマスター・テープは、今回特に米CBSに依頼して、当時の3~4チャンネル・オリジナル・テープからデジタル2チャンネルに新たにトラックダウン(ニュー・リミックス)し直したものである。
従ってAD(アナロ・グディスク)の限界を考慮してのリミッターやフィルターの類は全く使われておらず、マスター・テープさながらの新鮮で迫力に溢れた『フィラデルフィア・サウンド』が生々しく眼前に展開し、20年の歳月の経過や『レコード再生音であること』を忘れさせてくれる。・・・」
といった具合。CDがデジタル録音だけではなく過去のアナログ録音にも有効なメディアであるということが認知され始めた頃・・・かな?確かに、CDケースの裏には"New Remix Master" 太字のロゴが入っているし、ブックレットにも "Remixing for CD supervised by Laula Harth, Producer,1984."とか記載されている。
以上二つの解説はこのシリーズに共通して使われているもの。あと、各CD毎に和田則彦氏によるオーディオ面から見た「このCDの魅力について」が2ページ程。これは収録されている演奏の聴き所をオーディオ面からアプローチしたもの。これに曲目解説(各CD毎で執筆者は異なる)が加わる。
このCDシリーズとほぼ同時期に、同じニュー・リミックス・マスターでカッティングされたCBS/SONY 「オーマンディ名曲ベスト30」も発売されていたようである。
さて、この1960年録音の ベルリオーズの幻想交響曲 を聴く気になったのは、オーディオチェックレコードのすべて 誠文堂新光社 1976年 の和田則彦氏の記事を読んで教務をそそられたからである。
和田則彦氏による「チェック/デモ・ディスクの紹介」の「クラシック・ディスク(2ch/モノーラル)」に、マエストロ・ジーンとフィラデルフィア管弦楽団 のディスクが2枚取り上げられている。Columbia Masterworks録音の「幻想交響曲」(CBS/SONY SOCT-8)と「オルガン交響曲」(CBS/SONY SOCT-21)である。これは、CBS/SONY オーマンディ 音の饗宴1300 のディスクである。
和田氏によれば、このCBS/SONY オーマンディ 音の饗宴1300 盤も「他の追随を許さぬ」優秀録音盤ではあるが、これら2枚の旧盤(「幻想交響曲」はCBS/SONY SONW-20095~6、又は SOCF-22003、「オルガン交響曲」はCBS/SONY SONW-20095~6、又は SOCF-220014)の方が、より低音がハイレベルでカットされている・・・とのこと。その理由は・・・
「・・・SX- 68 導入の頃から CBSソニー静岡工場に”悪乗りカッティングの巨匠”がいて、米CBSからのマスター・テープに低域を減衰させてカッティングするよう補正カーヴの指定があったのを、あえてそのまま切ってのけたという神話がある。・・・(これらの盤は当時の)大賀社長も自邸装置のデモ盤に採用しておられるほどの木目状重低音音溝だ。
勿論現役SOCT(CBS/SONY オーマンディ 音の饗宴1300)も”直った”とはいえ、他録音の追随を許さぬが・・・。」
CDブックレットの「このCDの魅力について」にも、この「ローカットを忘れた強烈カッティングによる・・・」とあるから、和田氏にとってこの2枚はよほど強い印象を残していたらしい。
・・・ということで、どんな音が入っているのかとエッセンシャル盤( SME/Sony Classical Essential Classics SBK46329 )を聴いてみたのだが、重低音どころかとっても軽い音なので首をかしげてしまった。
不思議に思い、普通に”直った”CBS/SONY オーマンディ 音の饗宴1300 LP盤(SOCT-8 )を聴くと、こちらはCDの軽い音とは比較にならぬほどの重低音が鳴り響く。どうやら、エッセンシャル盤はリマスタリング時に大胆に低音をカットしてしまったようだ・・・
・・・ということで、(恐らく)最初のCD化であるこの2枚組CDを運良く入手して聴いたところ、エッセンシャル盤でカットされた重低音がハイレベルで鳴り響いた。やっぱりそうだったか・・・と合点した次第。
以前取り上げたサン=サーンスのオルガン交響曲についてはこの2枚組CDよりもエッセンシャル盤の方が良かったが、幻想交響曲 はこの初期のCDの方が圧倒的に音が良い。エッセンシャル盤は大胆な低音カットによりグランカッサやコントラバスの音に厚みや迫力がないし、セッションの緊張感も消し飛んでいる。米LP盤や国内LP盤(どちらかというと国内盤の方が重低音がハイレベルで刻まれている)の方がエッセンシャル盤より楽しめる。
それにしても、この当時のColumbia Masterworks は RCA Living Stereo(参考:Twice Told Records Gallery) や Mercury Living Presence(参考:Mercury Records Collection) よりオーディオ的には地味というイメージがあるのだが、なかなかどうして、結構冒険もしていたのだなあ・・・こうして重低音をきちんと再生して聴くと、この演奏の良さが一段と引き立つ。
エッセンシャル盤は比較的素直なリマスタリングのものが多く、極端なノイズカットのものは少ないと思っているが、この幻想交響曲については残念ながら・・・音はリマスタリング担当者のセンスによるところが大きいし、実際聴いてみないと分からないから悩ましいところだ。ソニーミュージックには、この初期のCDのリマスタリング以上の音質でこの幻想交響曲を出し直して欲しいものだ。
それでは。
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