Music for Organ and Orchestra - Ormandy/Philadelphia & Bernstein/New York2011年01月01日 10時10分


明けましておめでとうございます。
今年も、まあ気楽にお付き合い下さい。

さて、新年早々ではありますが・・・以前、サン=サーンスのオルガン交響曲を取り上げた時にこのアルバムが気になったので・・・

Columbia Masterworks MS6398 jacket
Columbia Masterworks MS 6398 Gray Label LP
STEREO "360 SOUND" (Regular MonoML5798)
MUSIC FOR ORGAN AND ORCHESTRA
Power Biggs(Organ)
Produced by John McClure

Strauss : Festival Prelude for Organ & Orchestra, Op.61
 Leonard Bernstein/New York Philharmonic
Barber : Toccata Festiva
Poulenc : Organ Concerto in G minor
 Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra

Barber available on CD
Sony Music Entertainment/
Sony Classical Classic Library SK 94739 (C)2005
Tower, amazon.com

ジャケットは左からバーンスタインビッグズオーマンディ の肖像画を並べたデザイン。主役は勿論オルガンのビッグズ であり、指揮者の両マエストロは今回は脇役?なのである。

Barber は5年前にCD化されているが、 Poulenc の方は残念ながら未CD化の音源。収録についてはLPのライナーノーツに簡単な説明が記載されている。

In the Poulenc concerto and the Barber toccata Mr.Biggs plays the three manual, 73 stops Aeolian-Skinner organ at the  Academy of Music in Philadelphia.

In the Strauss prelude Mr.Biggs plays a two manual, 10 stop  Allen Electric Organ on loan to Philharmonic Hall, New York City.

横田さんオーマンディ・ディスコグラフィによると、PoulencBarber は1962年10月7日に収録されているが、同時にサン=サーンスオルガン交響曲も同日収録されている。3曲とも1日で録音というのは凄いが、既に実演していて準備万端の状況での収録だから可能なのだろう。

一方、Straussバーンスタイン指揮NYP) は、John Huntのディスコグラフィによると 同月2日の収録となっている。 カップリングの他の2曲も含めて極めて短期間に収録されている。Strauss  については、

As performed opening week at Philharmonic Hall, Licoln Center for the Performing Arts.

 とLPにコメントがあるので、この演奏会の後の収録と思われるが・・・

ま、バーンスタインNYPはこのブログの主題ではないのでこれくらいにして、オーマンディフィラデルフィア管弦楽団に話を戻しましょうか・・・

繰り返しになりますが、以前とりあげた、サン=サーンスのオルガン交響曲も含めた3曲とも、収録場所はAcademy of Music、オルガンもホール備え付けのAeolian-Skinner Organ(参考:Ernest M. Skinner) が使われている。

オーマンディ/フィラデルフィアのすべて(日本コロムビア 1967年3月)によると、 このオルガンはエフレム=ジンバリスト夫人が亡父サイラス・H・K・カーティスカーティス音楽院の創立者)を偲んで1959年に Academy of Music に寄贈されたものだそうな。

Samuel Barber with Mary Louise Curtis Bok Zimbalist in Philadelphia , 1960
Samuel Barber with Mary Louise Curtis Bok Zimbalist in Philadelphia (1960)

Within These Walls - A History of the Academy of Music in Philadelphia by John Francis Marion(1984年)にも同様の記載があり(というかオリジナルはこっちかな?)、同書によると、フィラデルフィア管弦楽団の1960-61年シーズン最初のコンサートはサン=サーンスオルガン交響

この時の指揮は勿論マエストロ・ジーン、オルガン演奏はPaul CallawayPaul Callawayは同シーズンの9月、このオルガンの為に作曲された Barber "Toccata Festiva" の世界初演を行い、その後間もなくAlexander McCurdyWestminster Choirと共にこのオルガンの最初のリサイタルを行っている。その後直ぐに Virgil Fox もリサイタルを行ったそうな・・・

Columbia Masterworks MS6398 label
CBS MASTERWORKS Gray Label

手持ちのLPのラベルはGray Label 。ファーストプレスはたぶん2eyes と思うが・・・CBS Masterworks ラベルだから1970年代のプレス?かな。この辺りはよく分かりません・・・

日本では、PoulencBarber も発売されていない様である。確かなことは言えないが、LPを見かけたことがないので・・・売れ筋の曲でもないし。

しかし、Saint-SaënsPoulenc そしてBarberAcademy of MusicAeolian-Skinner Organ を使った今となっては貴重なドキュメントと言える音源なので、これら3曲を纏めて1枚のCDで出して欲しい・・・と思うのは私だけであろうか。

サウンドについてはサン=サーンスのオルガン交響曲 と同様、直接音を主体としたデッドなサウンドであり、Academy of Music の特徴が良く現れていると思う。オルガンの重低音もしっかりと入っているし、オリジナル・マスターからCD化すれば今でも十分通用する優秀録音ではないだろうか・・・Barber のCDはDSDリマスタリングでLPより遙かに良いサウンドに仕上がっているので、Poulenc も是非お願いしたい。

ちなみに、Eschenbach/Philadelphia によるこの3曲をカップリングしたCDが Ondine から出ている。

Ondine 1094-5
Ondine ODE 1094-5, CD/SACD Hybrid , NML

これは現在のホームである Verizon Hall での2006年5月ライブ録音。聴き較べも一興・・・かな?

では、今年も宜しくお願い致します。

Eschenbach/Philadelphia - Music for ORGAN and ORCHESTRA2011年01月03日 11時30分

元日はLPを聴いてブログを書いた後、大須演芸場で初笑い、その後ハイファイ堂にて初LP買い・・・オーディオコンポやCD、LP、雑誌の福袋があったりと正月気分に浸る・・・家に帰って ウィーン・フィルニューイヤーコンサートをFMで聴きました。昨日は久しぶりに実家にて入院中の親父を囲んで昼食会。3日目の今日は・・・ま、とりあえずこのSACDを聴きましょうか・・・

Ondine 1094-5
Ondine ODE 1094-5, CD2ch/SACD 5.0 surround & 2ch stereo Hybrid (P)2007 , NML
 Barber : Toccata Festiva
 Poulenc : Organ Concerto in G minor
 Charles Camille Saint-Saëns Symphony No. 3 in C minor ('Organ'), Op. 78
  Olivier Latry(organ),   Christoph Eschenbach/The Philadelphia Orchestra
  Recordings from the Inaugural Concerts of the Fred J.Cooper Memorial Organ
  in Verizon Hall at The Kimmel Center for Performing Arts, May 2006

Verizon Hall に設置された新しいオルガンの披露演奏会(2006年5月11日)のライブ録音なんですな。このFred J.Cooper Memorial OrganDobson Pipe Organ Builder によるもので、アメリカ最大級のオルガンだそうな。解説には、

... , it has 110 stops and 6,938 pipes ranging from the size of a drinking straw to two feet square by 32 feet in length. The instrument has two consoles: an upper mechanical console located below the facade, and a movable electrical console that can be positioned on the stage. ...

とある。BarberToccata Festiva をプログラムに加えているのは、 Academy of MusicAeolian-Skinner Organ で初演されたという歴史的な経緯を踏まえてのことだろう。

Samuel Barber with Mary Louise Curtis Bok Zimbalist in Philadelphia , 1960
Samuel Barber with Mary Louise Curtis Bok Zimbalist in Philadelphia (1960)

BarberToccata Festiva の解説にちょっとしたエピソードが記載されている。

 The stroy is told that Mary Louise Curtis Bok Zimbalist, one of the city's great musical patrons, called conductor Eugene Ormandy. "Eugene, are you standing?", she asked. "Please sit down. I'm giving you that pipe organ you've been longing for."....

さて、このSACDは 5.0chサラウンド収録されているが、生憎マルチ・チャンネルの再生環境が無いので、SACD 2chステレオで聴く。パワフルでクリアな音で聴いていて爽快。オルガンとオーケストラのバランスもいい。ヘッドホンで聴いたが、こういうのは大型のスピーカーで大音量で聴きたいものだ・・・

サン=サーンスオルガン交響曲オーマンディ のようなスコア改訂をせずに演奏している。(フィナーレのトランペットやパーカッション・パートの追加等)それらも含めて聴き較べるの一興かと。それでは。

次期フィラデルフィア音楽監督、注目のネゼ=セガンがBISに登場 ・・・ だそうな2011年01月08日 11時33分

タワーレコードのサイトに情報がありました。BIS からロッテルダム・フィルを振ったCDがリリースされるそうです。フィラデルフィアではありません・・・残念ながら。 「ゲルギエフより引き継いだ手兵ロッテルダム・フィルと興味深いシリーズをBISで展開していくという予定で乞うご期待」だそうである。

youtubeフィラデルフィア管弦楽団のチャンネルにもインタビューがアップされている Yannick Nézet-Séguin ですが、最近コレといったニュースが無かった(単に私が知らんだけかしらん?)ので、おやっと思いましたが・・・

フィラデルフィア とのレコーディングは実現するのかなあ・・・どうなることやら・・・BISならNML で聴けるから、待ってましょうかね。んでは。

Ormandy/Philadelphia - Berlioz "Symphonie Fantastique", 1960年2011年01月10日 07時00分

サン=サーンスのオルガン交響曲を取り上げた時、比較用にとりあげたこのアルバム・・・今回は1960年Columbia Masterworks 録音によるベルリオーズ幻想交響曲を・・・

CBS/SONY 52DC363/4
CBS/SONY 52DC363/34 2CDs (C)1985
Hector Berlioz : Symphony Fantastique
Charles Camille Saint-Saëns:
 Symphony No. 3 in C minor ('Organ'), Op. 78
 Danse macabre, symphonic poem in G minor, Op. 40

ベルリオーズ幻想交響曲、そしてサン=サーンスオルガン交響曲死の舞踏のカップリングによる2枚組のCD。52DCという番号が示すとおり、当時5200円の高価なCDである。とはいえ、この頃は1枚3200~3800円が相場(違ったかな?)の時代だったから、この当時としては割安な方かもしれないが・・・

このCDはマエストロ・ジーンフィラデルフィア管弦楽団の演奏を2枚組CD 10セットに纏めて、1985年に発売されたものの一つ。図らずも同年死去したマエストロの追悼盤みたいな形になってしまったような・・・Bruno Walter/Columbia SO のCD化に刺激を受けて、このコンビの昔の録音をオリジナルの3チャンネルマスターテープから新たにリミックス・ダウンした・・・というのがウリの企画と思われる。全10組のラインナップは下記の通り。

 52DC361/2  チャイコフスキー 3大バレエ
 52DC363/4  幻想交響曲、サンサーンス オルガン、死の舞踏
 52DC365/6  グランドキャニオン、ラプソディーインブルー、パリのアメリカ人
         ポーギーとベス
 52DC367/8  展覧会の絵、禿げ山の一夜、シェエラザード、スペイン奇想曲
 52DC369/70 チャイコフスキー交響曲4,5,6
 52DC371/2  ベートーヴェン交響曲3,5,6
 52DC373/4  トッカータとフーガ、パッサカリアとフーガ、主よ・・、アイネ・クライネ、四季
 52DC375/6  レ・シルフィード、シルヴィア、コッペリア、パリの喜び、三角帽子、
         ファウストのバレエ(グノー)
 52DC377/8  イタリア奇想曲、オネーギンのワルツ、1812年、ルスランとリュドミラ
         フィンランディア、亡き王女の為のパヴァーヌ、ラヴァルス、ボレロ、
         狂詩曲スペイン(シャブリエ)、ローエングリン3幕への前奏曲
         マイスタージンガー前奏曲
         ハーリーヤーノシュ~戦争とナポレオンの敗北
 52DC379/80 マーチ集

CBS SONY 52DC363-4
ブックレットの裏もお馴染みの写真・・・

ブックレットの解説について少々・・・

まず、志鳥栄八郎氏による「オーマンディと天下の銘記フィラデルフィア管弦楽団」で1ページ。これはCBS/SONY 「オーマンディ 音の饗宴1300」全50巻の解説と全く同じものである。

お次は、和田則彦氏による「CDで聴く華麗なるフィラデルフィア・サウンド」も1ページ。こちらは、当時新しいメディアであるCDに懐疑的な「スーパー・アナログ党」に対する、「CDへのお誘い」である。ちょっと引用しますが、

「・・・このシリーズに使われているマスター・テープは、今回特に米CBSに依頼して、当時の3~4チャンネル・オリジナル・テープからデジタル2チャンネルに新たにトラックダウン(ニュー・リミックス)し直したものである。
 従ってAD(アナロ・グディスク)の限界を考慮してのリミッターやフィルターの類は全く使われておらず、マスター・テープさながらの新鮮で迫力に溢れた『フィラデルフィア・サウンド』が生々しく眼前に展開し、20年の歳月の経過や『レコード再生音であること』を忘れさせてくれる。・・・」

といった具合。CDがデジタル録音だけではなく過去のアナログ録音にも有効なメディアであるということが認知され始めた頃・・・かな?確かに、CDケースの裏には"New Remix Master" 太字のロゴが入っているし、ブックレットにも "Remixing for CD supervised by Laula Harth, Producer,1984."とか記載されている。

以上二つの解説はこのシリーズに共通して使われているもの。あと、各CD毎に和田則彦氏によるオーディオ面から見た「このCDの魅力について」が2ページ程。これは収録されている演奏の聴き所をオーディオ面からアプローチしたもの。これに曲目解説(各CD毎で執筆者は異なる)が加わる。

このCDシリーズとほぼ同時期に、同じニュー・リミックス・マスターでカッティングされたCBS/SONY 「オーマンディ名曲ベスト30」も発売されていたようである。

さて、この1960年録音の ベルリオーズ幻想交響曲 を聴く気になったのは、オーディオチェックレコードのすべて 誠文堂新光社 1976年 の和田則彦氏の記事を読んで教務をそそられたからである。

和田則彦氏による「チェック/デモ・ディスクの紹介」の「クラシック・ディスク(2ch/モノーラル)」に、マエストロ・ジーンフィラデルフィア管弦楽団 のディスクが2枚取り上げられている。Columbia Masterworks録音の「幻想交響曲」(CBS/SONY SOCT-8)と「オルガン交響曲」(CBS/SONY SOCT-21)である。これは、CBS/SONY オーマンディ 音の饗宴1300 のディスクである。

和田氏によれば、このCBS/SONY オーマンディ 音の饗宴1300 盤も「他の追随を許さぬ」優秀録音盤ではあるが、これら2枚の旧盤(「幻想交響曲」はCBS/SONY SONW-20095~6、又は SOCF-22003、「オルガン交響曲」はCBS/SONY SONW-20095~6、又は SOCF-220014)の方が、より低音がハイレベルでカットされている・・・とのこと。その理由は・・・

「・・・SX- 68 導入の頃から CBSソニー静岡工場に”悪乗りカッティングの巨匠”がいて、米CBSからのマスター・テープに低域を減衰させてカッティングするよう補正カーヴの指定があったのを、あえてそのまま切ってのけたという神話がある。・・・(これらの盤は当時の)大賀社長も自邸装置のデモ盤に採用しておられるほどの木目状重低音音溝だ。
 勿論現役SOCT(CBS/SONY オーマンディ 音の饗宴1300)も”直った”とはいえ、他録音の追随を許さぬが・・・。」

CDブックレットの「このCDの魅力について」にも、この「ローカットを忘れた強烈カッティングによる・・・」とあるから、和田氏にとってこの2枚はよほど強い印象を残していたらしい。

・・・ということで、どんな音が入っているのかとエッセンシャル盤( SME/Sony Classical Essential Classics SBK46329 )を聴いてみたのだが、重低音どころかとっても軽い音なので首をかしげてしまった。

不思議に思い、普通に”直った”CBS/SONY オーマンディ 音の饗宴1300 LP盤(SOCT-8 )を聴くと、こちらはCDの軽い音とは比較にならぬほどの重低音が鳴り響く。どうやら、エッセンシャル盤はリマスタリング時に大胆に低音をカットしてしまったようだ・・・

・・・ということで、(恐らく)最初のCD化であるこの2枚組CDを運良く入手して聴いたところ、エッセンシャル盤でカットされた重低音がハイレベルで鳴り響いた。やっぱりそうだったか・・・と合点した次第。

以前取り上げたサン=サーンスのオルガン交響曲についてはこの2枚組CDよりもエッセンシャル盤の方が良かったが、幻想交響曲 はこの初期のCDの方が圧倒的に音が良い。エッセンシャル盤は大胆な低音カットによりグランカッサやコントラバスの音に厚みや迫力がないし、セッションの緊張感も消し飛んでいる。米LP盤や国内LP盤(どちらかというと国内盤の方が重低音がハイレベルで刻まれている)の方がエッセンシャル盤より楽しめる。

それにしても、この当時のColumbia MasterworksRCA Living Stereo(参考:Twice Told Records Gallery) や Mercury Living Presence(参考:Mercury Records Collection) よりオーディオ的には地味というイメージがあるのだが、なかなかどうして、結構冒険もしていたのだなあ・・・こうして重低音をきちんと再生して聴くと、この演奏の良さが一段と引き立つ。

エッセンシャル盤は比較的素直なリマスタリングのものが多く、極端なノイズカットのものは少ないと思っているが、この幻想交響曲については残念ながら・・・音はリマスタリング担当者のセンスによるところが大きいし、実際聴いてみないと分からないから悩ましいところだ。ソニーミュージックには、この初期のCDのリマスタリング以上の音質でこの幻想交響曲を出し直して欲しいものだ。

それでは。