Glenn Gould at Work - Creative Lying by Andrew Kazdin ― 2010年01月23日 10時20分
グレン・グールド アットワーク -創造の内幕-
アンドリュー・カズディン著、石井 晋(訳)、音楽之友社 1993年
「巨匠たちの録音現場」(井坂 紘、春秋社2009年8月)を読んでこの本の存在を知りました。Andrew Kazdin といえば、Columbia Masterworks で Philadelphia Brass Ensemble のLPアルバムを数枚製作しており、その彼が書いた本・・・ということで気になったんですワ。"Creative Lying"という刺激的な副題もついてますし・・・
1960年代の Columbia Masterworks はオーマンディ /フィラデルフィア管弦楽団、セル/クリーヴランド管、そしてバーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック というコンビを擁しており、恐らく同社の最盛期だったでしょう。
プロデューサーも、John McClure, Thomas Frost, Thomas Z. Shepard(後に引き抜かれて RCA Red Seal へ),Paul Meyers 等々、錚錚たる面々が揃っていて、この大所帯のプロジェクトを切り回してたんでしょう。
一方、RCA Red Seal は ミュンシュ/ボストン響→ラインスドルフ/ボストン響、フィードラー/ボストン・ポップス というラインナップで、しかも ライナー/シカゴ響 が ショルティ/シカゴ響 となって DECCA に取られてしまったりして、Columbia Masterworks と較べるとセールス上かなり苦しい状況だったようです。だから、1968年に Columbia Masterworks から オーマンディ /フィラデルフィア管弦楽団 を引き抜いたワケですが・・・
Andrew Kazdin は 1964年から1979年末に解雇(あるセッションを新規導入されたディジタル録音機で録らなかった・・・というのが理由・・・と本人は書いています)されるまで、 Columbia Masterworks で数々の録音をプロデュースしており、入社当時の活気溢れる状況から、退社に至る1979年暮れの 「冬が近づくにつれ、マスターワークス事業部内の空気は、凶暴な警察国家だったらきっとこんな感じなのだろう」 という、クラシック・レコード業界の興亡(まだ滅びていないけど・・・)も何となく感じ取れます。Columbia Masterworks は1980年に CBS Masterworks と名前を変え、1990年には Sony Classical となってしまいますが・・・
さて、この本には オーマンディ /フィラデルフィア管弦楽団 のセッションに関する記述はありませんが、 Philadelphia Brass Ensemble と Glenn Gould のアルバム ”Hindemith : The Complete Sonatas for Brass and Piano” に関する興味深いエピソード(290~295ページ)があります。このアルバムの最初のセッションに参加したトランペット奏者の Gilbert Johnson氏 はトロント空港の通関で拘束されてしまうという憂き目にあったそうな・・・ま、詳細は本を読んで下さい。 ある程度の規模の図書館を探せばあると思いますし、新品は入手困難のようですが、アマゾンのマーケットプレイスで定価3千円+千円(ちょっと高いなあ・・・)くらいで出品されてます。古本屋で見かけたら、買って損はないかも・・・
それにしても、Sony Masterworks のサイトで Philadelphia Brass Ensemble を Artists で探すと、
The Philadelphia Brass Ensemble & Percussion
Glenn Gould Members of the Philadelphia Brass Ensemble
The Philadelphia Brass Ensemble
の3つがあるんですが・・・クラシック音楽スタッフの程度が知れますなあ・・・ちゃんとやんなよ・・・ちなみに、Sony Masterworks のサイトの他の オーマンディ /フィラデルフィア管弦楽団 関係はリンクは・・・
Philadelphia Orchestra
The Philadelphia Orchestra
Eugene Ormandy
Philadelphia Woodwind Quintet
というところ。 フィラデルフィア管弦楽団 が2つあるのですが、内容を理解していない人が機械的に振り分けた・・・としか思えないですなあ・・・ま、世の中こんなもんですワ・・・んでは。
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