EVEREST RECORDS 再び その12008年10月08日 05時30分

EVEREST RECORDS がまたCD復刻された。

1950年後半、ステレオ創世記に35MM磁気テープ録音(35MM映画フィルム幅と同じ磁気テープ)をウリにしたHi-Fiレコードを製作していた・・・といっても全てが35MM磁気テープ録音というわけではなく、多くはone-half inch 3-track 磁気テープ 録音で、復刻CDを聴く限り、ハイ上がり気味な 35MM より 通常の磁気テープ録音のほうがバランスが取れているように思える。

1960年代に入ると自社録音は殆ど無くなってしまい、再発又は他レーベル原盤LP製作が中心となり、1980年代後半になると(CDへの転換期ということもあり)そのLPすらも入手困難な状態であったと記憶している。

故長岡鉄男氏が優秀録音盤としてよくこのエベレスト盤を取り上げており、「外盤A級セレクション」「レコード漫談」「レコードえん魔帳」等で氏の軽妙な語り口で紹介していた。

EVEREST RECORDS は、当時 Belock Instrument Company を経営していた Harry D. Belock が その会社の一部門として立ち上げたレーベルであり、国防(軍用レーダー及び弾道ミサイル制御等)でしこたま稼いだ金をこのレーベルに注ぎ込んだ・・・というところだろうか。恐らく録音装置は自社製であり、自社の技術的なPRも狙っていたと思われる・・・が、その辺りの詳細は下記のリンクを見てほしい(アタシャ英語は全然ダメなのよ・・・)

Harry D. Belock
http://en.wikipedia.org/wiki/Harry_D._Belock

Everest Records
http://en.wikipedia.org/wiki/Everest_Records

んで、1993年、OMEGA RECORD GROUP が 傘下の Vanguard Classics(この会社も音をウリにしていた会社) より EVEREST RECORDS の過去の録音を引っ張りだして、Sony の SBM 技術でCD復刻して、ようやくこのレーベルの自社優秀録音(クラシックのみ、ジャズは対象外であったと思う)が日の目を見ることとなった。長岡氏が優秀猛烈録音として取り上げていた"Corroboree"もLPを凌ぐ音質で復刻され、長岡ファンの間では話題になったのではないだろうか。

Vanguard Classics
http://en.wikipedia.org/wiki/Vanguard_Classics

しかし、この復刻CDも2008年現在ではすでに入手困難となっており、まだまだ膨大な EVEREST RECORDS の全貌をつかむ迄には至っていない・・・なんて思っていたが、最近またこのEVEREST RECORDS をCD復刻する会社が現れた。

Harkit Records
http://www.harkitrecords.com/

Everest Records
http://www.harkitrecords.com/everest.html

1993年の復刻CDには無かったカタログもあり、早速数枚オーダーしてみた。

EVEREST RECORDS 再び その22008年10月08日 06時40分

EVERCD 014
EVERCD 014 (CD,(C)2008)

ERIK SATIE - Orchestral Music of Erik Satie
French National Radio and Television Orchestra
Manuel Rosenthal

tracks
1.Parade
2.Trois petite pieces montees
3.Socrate(part 3)
4.En habit de cheval

録音は1959年以前と思われる。 EVEREST は録音に関する記録を残していないみたいで、録音日やロケーションは不明。

このCDは、1950年代後半当時のフランスのオーケストラの音色を聴きたくて入手したもの。この当時のフランスのオーケストラの管楽器の音色は現在ではなかなか聴けない。楽器そのものが別物なので、この当時の録音でしか聴くことが出来ない。当時のアンセルメ/スイス・ロマンド管もアンサンブルは雑だけど、その独特の管楽器の音色は今でも聞く価値があると思う。

んで、期待したこのCD、復刻については大いに不満がある。ノイズ除去をやりすぎて音がくすんでしまっている。テープヒスノイズを殆ど聞き取れないほど除去してしまい、ニュアンスや雰囲気までごっそり削ぎ落とす結果になってしまった。超低音もカットしているらしく、セッションの雰囲気も消し飛んでいる。嗚呼・・・

しかも、妙な息継ぎも聞こえる。これは過度なノイズ・リダクション操作を行っている多くのCDで共通に感じるものだ。ヘッドホンで聴くとホントにそれが良くわかるのだが・・・

これは、ノイズ除去が悪いとか使用する道具の問題では無く、関わるスタッフのセンスの問題であり、センスの良いスタッフによる復刻という「幸運」を期待するしかない状況で非常に残念なことだ。

復刻された音を聴く限り、元の音源の素性は良さそうだから、もう一度レストアをやり直すべきだろう。出来ればSACD化してもらうとなお良い。このパラードの録音は20kHzを超える音域が記録されているハズだから。(確か、長岡鉄男氏の「外盤A級セレクション」で紹介されていた録音だったハズ)。

とはいえ、ローゼンタールが当時のフランスのオケを優秀な録音で残した歴史的な演奏なので、興味のある方は聴く価値がある。

EVEREST RECORDS 再び その32008年10月08日 06時48分

EVEREST EVC9002
う~ん、残念。今回の EVEREST 復刻CD はレストア時の過度なノイズ除去で躓いてしまった・・・

気を取り直して、1993年復刻の EVEREST CD を。

EVEREST EVC9002
Rachmaninoff : Symphonic Dances
Stravinsky : Le Sacre du Printemps
Sir Eugene Goossens
London Symphony Orchestra

Sir Eugene Goossens
http://en.wikipedia.org/wiki/Eug%C3%A8ne_Aynsley_Goossens

ラフマニノフは 1958年以前、ストラヴィンスキーは 1960年以前の録音と思われる。 ラフマニノフはオリジナルLP SDBR 3004-2, ストラヴィンスキーは オリジナルLP SDBR 3047 の発売年がそう記されているので、録音はそれ以前・・・としか推測出来ないのだ。

録音機材は、ラフマニノフが one-half inch 3-track magnetic tepe、ストラヴィンスキーが 35MM 3-track magnetic film と記されている。

このCD復刻は大変上出来で、ヒスノイズは残っているがそう耳障りではなく(最初の弱音部は気になるが、進むに従い気にならなくなる)、セッションの雰囲気や空気感(これは超低音がもたらすもの)も感じられる。これがあると無いでは大違いなのだが・・・

演奏も素晴らしい。ハッキリ言って当時のLSOは優秀なオケとは言えなかったと思う。アンサンブルも雑なところあるが、演奏の熱気がそれを吹き飛ばしてしまう。

特に、ラフマニノフの「交響的舞曲」は指揮者の個人的な思い入れが強かったのか、実に感動的な演奏で、僕の聴いた中ではベスト3に入る名演奏だと思う。録音も変に強調したところが無く自然な感じで録れている。

ストラヴィンスキーもなかなかいいが、こちらはオケの機能がモノをいう曲でもあり、現在の水準からすると・・・という部分もあるが、それでも十分に楽しめる演奏だと思う。こちら当時のウリの35MM録音だが、前述のラフマニノフの方が音はいいと思う。こちらは少し硬質な感じがする。これは Mercury living Presense の35MM録音とも共通するところであり、原理的な性能の良さが最終的な製品の形で必ずしも現れるわけではない・・・というところか。

1960年代初頭、まだまだ「ハルサイ」は難曲だったのか、「コンチキショー」と指揮者とオケが取っ組み合いしている雰囲気があり、現在のように「評価が確立」「難曲から名曲」で、アッサリ整然と演奏してしまうのとは違い、これはこれで面白い。人間、スレてはアカンということかなあ・・・

では。